第11話
「では、話を聞いていただけるのですね」
私がそう聞くと、りゅうがは立ち上がり、庵から外にでてこちらをむく。
「現せ【偲顕】《しけん》」
そうりゅうがはいうと少年の姿がかわり始める。
「なっ!? 女性」
それは私と同じぐらいの着物姿の少女だった。
「驚きましたか、私がりゅうがでございます。 天陽さま」
そう丁寧に挨拶した。
すると
(なるほど女物の着物の袖は長い。 この子はそれをつかもうとしていたのか)
「この子は他の子とあまり打ち解けなくて......」
そういってりゅうがは操の前にかがみ、目線をあわせて頭をなでている。
「私たち
「雅か...... それでともにきてもらえるのだろうか」
「......この子たちが安心して住めるお国をお作りいただけますか」
そう真剣な目で私の目をみる。
「もとより、そのつもりです」
「わかりました。 それではよろしくお願いします」
私は流雅、
「なにしてたんだ?」
「天陽さま......」
私は戻り仔細を暁真と風貴の二人にはなした。
「なっ!? あいつが流雅!!」
「信じられません...... 先ほどの子供が、少女......」
二人は驚いている。 とりあえず一度夕凪のもとにもどり、ここに迎えを呼ぶことにした。
「私が流雅です。 よろしくお願いします」
そう流雅は挨拶した。 私たちは夕凪の店、夕顔へともどって、今後のことを相談する。 子供たちは店の奥へとかくまっている。
「......それでどうやって現主座を譲位させるかだが、なるだけ兵はあげたくはない」
「無理だろ。 はいそうですかと簡単に譲るとは思えん。 しかも至文将が画策しているならなおさらだ」
「......正直、暁真の申すことが正しいかと、やはり天陽さまを支持するものたちを率い、主座と宵夜を捕縛するのが、最善だと思います」
風貴がそういうと、夕凪はうなづく。
「かなり深く調べましたが、天陽さまを支持するもの、現主座に反するものがかなり多い。 おそらく戦えば天陽さまが勝たれると思います。 しかし、民や国への被害が......」
(しかしそれでは国は荒れ果てる。 それに......)
「......流雅、これをどうみる」
黙っている流雅をみて、話を向けた。
「現在の天沼の国のお話をお伺いしましたが、結論からいえば勝てはするでしょう。 ですが戦うことはできません」
「どういうことだ? 勝てるが戦えないってのは」
暁真が怪訝な顔をしてきいた。
「ええ、戦って勝てても、国を維持することは困難です。 それは天陽さま、夕凪さまならばお分かりかと......」
「【荒河の国】《あらかわのくに》か......」
私が言うと夕凪もうなづいた。
「はい、常に天沼と対立している東の隣国です。 国が割れればその隙をついて攻めて参るでしょう。 かの国の主座【猛水】《たけみず》は好戦的で、ここ数年前、近くの少国をいくつかおとしております」
「......ですな。 荒河の国と天沼の国は、はるか昔から対立し、十年前の戦ではあと一歩まで追い込まれました。 なんとか撃退しましたが、かなりの痛手をうけ今の現状の一因になった」
(そう、夕凪のいうとおりだ。 まだ父君が主座だったころ、私はあの惨禍をみた)
あの地獄のような光景を思いだす。
「それで戦はできないとみている...... か」
「はい、いくら国を取り戻しても、滅ぼされては意味がない。 それは宵夜どのも知っておられる。 ゆえにゆるりと毒殺をしようとしたのではないかと......」
「なるほど、なれば急に天陽さまを狙いだしたのなぜなのだ」
そう風貴は、流雅に尋ねる。
「おそらくこの状況を狙ってのこと......」
「......この状況、私がこの国に出奔したことか」
「ええ、彼にとってあなたを殺すことはあくまでもついで。 そのまま死ぬもよし、生き延びても戦を起こすことはできないなら、この隙にやることを考えているのでしょう」
「この隙にやること?」
暁真が首をかしげる。
「現状、国の状態から天陽さまにつくものは多いでしょう。 しかしお互いに誰についているかはわからなかった。 夕凪さまが動かれたことで、おおよその推測はついたはず、それを各個に暗殺、懐柔を試みるはず......」
「......やられたか、確かに秘密裏に接触に動きましたが、それでも痕跡を全て消すことはできません。 動きを読まれていたならあたりをつけていたはず、なれば天陽さまを国からだしたのは......」
夕凪が考え込む。
「ええ、その繋がりを知るためと、国を捨てた事実をつかむため...... これを元に説得をおこなうやもしれません」
「逃げたと吹聴して離反を促すか」
「それならこちらについているものたちも、向こう側につくこともあり得ますね」
風貴と暁真はうなづく。
(確かに国をでたことを知られれば、国を捨てたと思われる。 それゆえ簡単に外にだしたのか)
「国をでずに対抗すべきだったか......」
「いや戦はできねえ。 ならば同じことだ。 どうせ残っていたとしても暗殺される」
悔やむ私に暁真はそういった。
「そうですね。 かなり前から入念に準備はしていたのでしょうね。 これは避けられぬことだったと存じます」
「ならば手はないのか?」
「いいえ、策はあります」
そう流雅は静かにいった。
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