第10話 ヒュドラ対おっさん
ヒュドラ。
九つ前後の頭を持つ蛇型のモンスター。
噛みつきや薙ぎ払いの他、強い猛毒のブレス攻撃なども行う。
鱗の色は黒や青、紫などの色が多く、短い前脚を持つものもいる。
防御力自体はそれほど高くないが、再生能力を持つ場合が多い。
多くは上級または超級ダンジョンなどの深層で出現する。
モンスター鑑定のスキルはないので確定ではない。
だが、記憶にある情報と目の前のモンスターの特徴はかなり一致している。
「出現階層がっ……全然違うけどっ……ねっ……」
うねりながら俺に迫ってくる暫定ヒュドラの頭を必死に避け続ける。
狭い通路での戦闘は分が悪かったため、少し後退していまは
「よっ……とぉっ……」
立て続けに迫る頭を回避に専念して懸命に避ける。
通路だと比較的大きいモンスターのヒュドラが動きにくいと言う利点はある。
しかし、ブレス系の攻撃をほぼ避けられないのは致命的だった。
だからと言って、もちろん広い空間が俺たちに一方的に有利なわけもなく。
長い首で俺の死角を狙ってくるヒュドラ頭が多すぎるっ……
同時にすべての頭が攻めてこないとはいえ、ほぼ多対一を強制され続けて精神が削られる。
反撃や撤退する隙も今のところ見いだせていない。
「「「キシャァァァァァァァァァッ」」」
「っ……しまったっ……」
3本のヒュドラ頭に誘導されてしまい、ブレス予備姿勢のヒュドラ頭の目の前へ飛び込んでしまう。
「ギジャァァァァァッ」
明らかに身体に悪そうな色の毒液をヒュドラ頭が勢いよく吐き出す。
避けるのも魔法も残念ながら間に合いそうにないっ……
せめて
「くっ……」
スモールシールドとジャージがジュゥゥッと音をたてながらあっという間に溶ける。
毒液がかかった全身の皮膚が焼け
いってぇぇぇぇぇぇぇ……
「お任せくださいましっ! ”
薄緑色の光が俺の全身を包み、痛みが引いていく。
「助かりますっ!」
ヒュドラから目を
その時、少し高めの位置から全体を見渡していた1本のヒュドラ頭が藤堂さんの方を向く。
爬虫類特有の表情のない目で藤堂さんを見つめ、軽く叫ぶ。
「キシャァァァァッ」
途端、2本のヒュドラ頭が俺を避けて藤堂さんに向かう。
やばいっ……
もしかして俺が藤堂さんに回復してもらったことに気づいたのか!?
「「ギジャァァァァァッ」」
さっきと同じような毒液を今度は2本のヒュドラ頭が同時に吐き出す。
くそっ、間に合えっ。
瞬間、両足に全力で魔力を込めて藤堂さんの方へ飛ぶ――
ジュゥゥゥゥゥゥゥ……
「きゃっ……」「くっ……」
毒液のしぶきが俺の顔にもかかる。
藤堂さんに抱き着くような形で毒液ブレスから一緒に回避しようとしたが、ギリギリ避けきれなかった。
藤堂さんの左腕に大量の毒液がかかり、ジュゥジュゥと煙と音を立てている。
「回復をっ!」
「っ……はいっ! ”
ヒュドラ頭から距離を取りながら回復指示すると藤堂さんも素早く対応する。
薄緑色の光が彼女の左腕を包み、逆再生かのように皮膚がきれいになっていく。
「キシァァァァッ」
間合いが空いたせいか、ヒュドラ頭たちはうねうねとしている。
この距離だとすぐには攻めてこないようだ。
本体の移動速度はそれほど速くはないのかな……?
それなら……
「藤堂さん、俺がヒットアンドアウェイで削ります。 ヘイトを取らない範囲でフォローお願いします。」
「承知しましたわっ。再生能力に気を付けてくださいましっ。」
「俺もそう思います!」
さっきやり合った感じなら、速度重視で攻めれば捕まらないはず……!
再び足をぐっと曲げ、魔力を込めていく。
ゆらゆらするヒュドラ頭の一つをターゲットに決め、ショートソードを上段気味に構え、タイミングを見計らう。
いっくぞ――
全力で地面を蹴る。
「そいっ……!」
急接近した勢いのままにヒュドラの首めがけてショートソードを叩きつける。
確かな手ごたえ。
腕にも更に魔力を流し込んでそのまま首を押し斬る。
「”
斬れた首に向けて即座にゼロ距離から火魔法を撃ち込む。
記憶の通りならこれで再生は防げるはずっ……
残りのヒュドラ頭の動きに警戒しつつ素早くヒュドラから離れる。
「大丈夫そうですわ! 再生していませんわ!」
「了解ですっ……! この調子で削っていきましょう!」
情報通り再生はしなそうだ……
それじゃあ、あとは根競べだっ……!
「これでっ……9本目っ……!」
ヒュドラの最後の一本の首を斬り捨て、即座に”
軽くバックステップして距離を取る。
荒くなった息を整えながら、ヒュドラを睨み続ける。
ビクンビクンッと
そして、ようやく光の粒子になって消えていく。
「はぁ……はぁ……何とか、なりましたね……」
「は、はい……えっと、その……す、素晴らしい戦いぶりでしたわ……」
ようやくヒュドラから視線を外して藤堂さんの方へ振り返る。
どうしたんだろう……?
真っ赤な顔をして、よだれでも垂らさんばかりの表情。
目を両手で隠そうとしているが、隙間から明らかにガン見ている。
若干取り乱した感じでわたわたとしているが、視線は全くぶれない。
何だか、目線が俺の下半身の方に行っているような……
「……?………………ほわっ!?」
悲報。金獅子のベスト以外のすべての防具が溶けてなくなっていた件。
もちろん、ジャージも下着も何もかも。
慌てて”アイテムボックス+”から予備の服を取り出して着ました。
そんなバタバタで拾い忘れかけたドロップアイテムは魔石、牙、劇毒ポーションの計三つだった。
はぁ……若い
堂々とお見せするほど立派なものではないのだよ……
はぁ……
――――――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます。
やっとメインヒロインちゃんの紹介回を出せました。
フォローと★★★がまだの方は執筆のモチベアップになりますので、ぜひよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます