第5話

「あれ?どこ行ったんだろう?」

話している間に、アルマはステージからいなくなっていた。

「たぶん、あの部屋だ」


ずいぶん屋敷の奥までやってきた。

「こんなところ、入ったりして大丈夫なの?」

「問題ない」

リオンさんはそう言って、どんどん奥へ進んでいく。

「ねぇ、リオンさん…」

「リオンでいい」

「リオン、さっき言ってた本当の自分を見つけるってどういうことなの?」

私は言い直して、リオンに尋ねた。

「それは…」

リオンが何か言おうとすると、壁にかけてあった鏡が話しかけてきた。

「君、かなり自分を覆い隠していきているんだね」

「え?」

私は立ち止まった。

「だってほら…」

鏡に映し出されたのは、教室にいる私だった。

いつも周りの意見に合わせて、本当のことを言えない私。

でも、その方が一人になることもなく、平和に過ごすことができる。

「それは、一人になりたくないから…」

「友達に嘘までついて?興味のない話題でも興味のあるフリをして、友達を騙しているのに?」

友達を騙している…確かにそうかもしれない。

「本当の君ってなに?」

本当の私…

「おい、愛莉、何してるんだ」

リオンの声で私は我に返った。

「今の、聞こえた?」

「何か聞こえたのか?」

リオンには鏡の声は聞こえていなかったらしい。

「見えてきた。あの部屋だ」

赤いドアが見えてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る