第42話 「リッチ、ダリア」
翌朝、私とレイアは食事を終え、今日から始めるリータ国にいる魔族と魔物達の戦力強化について話し合っている。
「タクトよ、アンデッドのいる場所を教えておこう」
「よろしく頼む」
「まず、リッチが第六階層中広間。ドレッド・レイスが第五階層中広間。ゾンビ達が第二階層中広間じゃ。スケルトンは数が多いから、会いたい時は連絡してくれ」
「わかった。ありがとう」
「リッチとドレッド・レイスは強力な魔物じゃ。くれぐれも気をつけてくれ」
レイアの忠告に私は
「わらわはほかの魔族の課題を与えに行くが、適当に強い奴をあてがえばよいのじゃな?」
「ああ。四天王達にもヒュドラと戦わせてレベルを上げてやってほしい」
「あいわかった。こちらは
「うん。お互い頑張ろう」
レイアは席を立ち、
「さて、私も行こう」
最初の目的、リッチに会うため、意識を集中してテレポートを使用し、第六階層へと移動する。
中広間の扉を入ってすぐの場所に転移した私は、物々しい
「あれだな」
私が気づくと、向こうも気づいたらしく、私の方にものすごい速度で向かってくる。並の人間ならショック死しているだろう。
「何の用だ? 魔王の夫よ」
彼女は怒りに満ちた
「はじめまして。私はタクト。貴女を
私の言葉に彼女は左手で私の肩に
「うおおおお!!!」
リッチが
「
リッチは浄化される。身体は赤みを
「
私は呪文を唱え、彼女の身体から消え、逃げていく呪いの力を一つの玉として集約する。何が起こったかわからず、リッチは驚いている。
「これは一体、どうしたというのだ?」
「これで話ができそうだね。名前を教えてくれるかな」
リッチは変化した自分の身体を確認して
「私はリッチのダリアだ。この身体は私の経箱にある魂が補完されない限り成しえない。何をした!」
「そうなんですか。じゃあそうなったんでしょうね」
私は彼女の青い眼を見て答える。
「バカな! あり得ない。私はリッチなのだ! 永遠に満たされぬ身体なのだ」
「ええ、その力はこの中にあるから大丈夫です。あとで返すよ」
私は二人の
「それより、何で怒っているのか教えてほしい」
彼女は少し
「ハハハハ! 何を怒っているのかだって? 面白い事を言う奴だ。いいだろう、教えてやる。私は人間のダリアだった頃、ある貴族の男にウィザードとして
彼女の話によると、ある事件をきっかけに主人から魔女として告発され、裁判にかけられ処刑されたのだそうだ。
「
彼女の話をじっくり聞き、私はある提案を思いつく。
「じゃあ今からその貴族のところに行ってみる?」
「は?」
「
「……生きていると思うが。何をバカな事を!」
「その人のいる場所、わかる?」
「大体なら……」
私はテレパシーで彼女から場所を聞き、
「こいつか。部屋にいるようだ。行くか」
ダリアは驚いた表情のままだが、意志を確認することなく私は呪文を唱える。
「グレーター・テレポート」
私とダリアの身体は消え、貴族の男がいる部屋へ瞬間移動する。彼は
「いた。これでいいか?」
私はダリアに確認する。彼女も、移動先の貴族の男もまた、突然の事態に
「な、何だ貴様ら?」
異変に気付いた彼は、
「間違いない。奴だ! 私を裏切り、命を
ダリアは怒りに満ちあふれ、己の
「お前はまさか! 私は……」
震える声を
「
ダリアは青い炎を男に対し打ち放つ。業火に焼かれ、彼は
「クソ野郎が…… 私の心を踏みにじって……」
ダリアの青い瞳はくすみ、涙があふれていた。私は非情な質問をする。
「これでよかったか?」
彼女は涙を
「ええ、感謝します。タクト様」
「じゃあ、戻ろうか」
私は再びグレーター・テレポートを唱え、第六階層へと戻る。その後、私は彼女に目的の続きを話し始める。
「改めて、リオリス国との戦争に向けて、君を
「私を、ですか?」
「君だけじゃなく、この国すべての魔族と魔物を強化しようと思ってる」
「えええっ!!!!」
「驚くのはもっともだけど、この国の戦力が圧倒的に足りないんだ。今のところ、もうみんなを強くするしか方法が無い」
私はダリアに現状を説明し、これからの事を話した。
「話はわかりました。だけど、私にはもう
ダリアは
「いや、それはこれから……」
私は説明しようとするが、ダリアに
「
ダリアはそう言うと、おもむろにすべての装飾品と衣服を脱ぎ去り、私に
「おわっ!! 何を!!」
私は彼女の意図を受け入れ、覚悟を決めた。ダリアが
◆◆◆
「ご、ごめんなさい。急に
互いに服を着終えてから少しして、ダリアが私に話しかけてくる。
「いや、もう全然断る
私は
「そうでしたね。ごめんなさいね」
「いやまあ、貴女がよければそれでいいんですけど」
「魔王様になんて言えばいいのか、ごめんなさい」
「ああ、それなら大丈夫だから、気にしないでいいよ」
私は
「あ、そうだ。さっきの元の力、返すよ」
私は置いていた
「おおおお!! 今までの力が戻ったのを感じます。そして今までとは比べ物にならない力!! 感謝します!」
ダリアは力を実感し、喜びに打ち震えている。私は同意し、
「では、話の続きをするよ」
私はダリアにアンデッドの変化した仕組みとこれからの課題内容を説明する。ダリアは一つ一つに耳を
「なるほど。死んでしまってもいいのですね?」
「うん。むしろ死んだら経験値がすごく入るから、魔力が
「わかりました」
ダリアは私の説明も意図もすぐ理解してくれた。さすがリッチだ。
「レベルアップをしてクラスが上がる事もあるから、どんどん戦ってほしい」
「何と戦うのです?」
「そうだな、君はレイアから強いって聞いてるから、とりあえずヒュドラからやってみるか」
「ヒュドラ…… いいでしょう。今の私に相手できるかわかりませんが」
「そのくらいでいいんだよ」
私は意識を集中し、召喚魔法を使用する。広間の中心に魔法陣が現れ、巨大な七つ首のヒュドラが出現する。
「よし、こいつと戦って
「わかりました。色々ありがとう、タクト様」
ダリアはロッドを手に構え、七つ首のヒュドラに身体を向ける。敵意を察したヒュドラの首達が
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【まめちしき】十人のメイド達の名前一覧(※作中でレイアが決めた順です)
1. アン 2. フェリシア 3. スザンヌ 4. リビエラ 5. キャシー 6. エミル 7. ニーナ 8. ルミエル 9. チェルシー 10. ロゼ
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