第43話 「ドレッド・レイス、メアリー」
私は第六階層へテレポートで転移してきた。先ほどと同じ中広間だが、
今回の目的の相手は、探さなくてもすぐにわかる。闇の衣をまとった赤く光る眼を持つ幽霊が私を
ドレッド・レイス。四天王達と同じ大きさほどある。武器などは所持していない。今、私との距離は十分にある。だが殺気の裏に
「どうしたものか……」
私が思考を
その直後、風魔法に似た
加護の効果はドレッド・レイスの実体のない巨体をノックバックする。距離を取ろうと逃げようとするが、その巨体は
「
「何も感じないな。このまま降りていくしかない……」
私は決意を固め、深層に向かう事にする。強烈な殺意を感じながら、底の見えない下層に降りていく――。
◆◆◆
二十分ほど降りた先に、ようやく底らしきものが現れる。何度か戦闘し、精神的疲労は少しあるものの、このくらいなら何とか行けそうだ。そんな中、遠くに青くゆらめくかすかな光を見つける。
私は光を目指して加速する。程なくして、光の正体が人間の魂であることがわかる。魂は
「どうした? 何を
私は青い魂に声をかける。
「来るな!!」
強烈な拒絶で私に答える。
「すべてが憎い!! すべてを
「なぜだ? 何がそうさせる?」
「わからぬ! あるのは
彼女の拒絶の言葉に私は絶望を感じ取る。私は原因を知りたくなった。
「すまない。少し入らせてもらう」
私は彼女の魂に触れる。
「これか」
私は『
「これは! ……何と
「感じたのか? ……そうだ。私は殺害されたのだ」
彼女が受けた体験。それは無実の罪で
「だけど、これでは
私はダリアのようにはいかないと
「聖なる光で呪いを解け!
杖から聖なる光がほとばしり、彼女の魂を包み込む。魂は半透明の女性の形に変わり、私の前に現れる。成人前くらいに思える
「この身体…… 私なの?」
目の前の女性が自分の姿を確認しだす。予期せぬ出来事に
「はじめまして。私はタクト。貴女の名は?」
私の言葉に女性は初めて私に気づき、少し考えこんで答える。
「あ、 ……私、 私は……メアリー」
「メアリー。いきなり入ってきてすまない。こうするしか話す方法が無かったんだ」
「そ、そうですね……。私も長い間、自分であることを忘れていましたから……」
「失礼ながら、君の過去、見させてもらったよ。私にはどうしてあげる事も出来なかった。だから代わりに、浄化の術を使わせてもらった」
私は自分の無力さを
「とんでもない事です! またこうして自分でいられるなんて、思いもしませんでしたもの! ありがとうございます!」
彼女の言葉に少し救われた気がする。
「実は、私がここへ来たのは……」
私はダリアに説明した時と同様、戦争の話と強化計画の事をメアリーにも話した。
「わかりました。私はどうすればいいの?」
「そうだな、まずは召喚した魔物と戦って、レベルを上げてもらいたい。その前に、ここから出るよ」
私はメアリーに
「少しだけ待っていてくれるかな?」
「はい」
ドレッド・レイスの姿のメアリーの前で、私はレイアにテレパシーで通信を送る。
『どうしたタクト、何かあったか?』
『うん、実は……』
私はダリアとの事を話して謝罪し、メアリーの事情と訓練相手の話をした。
『そうじゃったか。色々大変じゃったのう。
『ありがとうレイア。また報告するよ』
レイアの許可はもらえた。私は魔法を唱え、部屋の中央に一体の悪魔を召喚する。
「これは!?」
「アイス・デヴィル。レイアの部下だ」
「魔王様の?」
カマキリの顔を持つ二足歩行の白い昆虫型の悪魔。太い尾には
私はメアリーに彼について説明する。
「軍団の指揮官だ。相当強いよ。当分は彼と戦ってレベルを上げてもらいたい。彼にもいい経験になると思うし」
メアリーは目の前に
「わかりました。やれるだけやってみます」
お互いに相手を認識し、戦闘が始まる。槍と風の渦がかち合う音が部屋中に激しく
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