第29話 「レイア、身ごもる」
私は眠い目をこすり、
レイアの姿が無い。もう先に起きているようだ。衣服を
食卓のある部屋に移動すると、レイアがぐったりしてテーブルに
「レイア!?」
私はレイアに
「レイア、大丈夫か! 一体何があったんだ!?」
「タクト…… 起きてから調子が良くないのじゃ」
いつものきらきら
「ヒールをかけようか?」
「いや、すでにかけておる。じゃが、なぜか気分がすぐれないのじゃ」
回復魔法は万能のはず。今まで効果がないなんて無かった。
「そうなのか? ヒールで回復しないって何だろう」
「わらわにもわからぬのじゃ」
体力的な問題ではなさそうだ。という事は病気系か?
「レイア、キュアをかけてみる。念の為、ハイヒールとダークヒールもかけてみる」
私は考え付くすべてを試そうと、レイアに魔法をかけた。少し
「レイア、魔界には病院という場所はあるのか?」
「病院?」
「けがをしたり病気になったりした者が
「ああ、あるのはあるぞ。
なるほど。回復魔法があれば難病とかも治りそうだしな。とりあえずあるなら
「レイア、その
「そうじゃな。わらわもそうしたい」
「よし、準備して行こう」
私は手早く準備を済ませ、レイアと共に
「レイア、
「ああ、地図を出す」
レイアはモニターを出現させ、魔王城からの
「ここじゃな」
レイアはいくつかある中の赤い点を指さす。
「わらわが利用している行きつけの
「よし、そこへ行こう」
私は
「グレーター・テレポート」
次の瞬間、私とレイアは
「ここじゃ。もう診察しているようじゃな」
前の世界での中型の大きさくらいの病院に似ている。建物は六階建ての草色のレンガ
「そこそこ魔物がいるな」
扉を開けると、
私とレイアは受付と思われる窓口へ進み、窓口のゴブリンを
「いらっしゃいませ。あ、魔王様!!」
受付のゴブリン
「その魔王様を
私はゴブリン
「かしこまりました。直ちに診察するよう連絡いたします。魔王様の担当医師は本日
ゴブリン嬢はそう案内すると、
「魔王様、こちらの水晶に手を当ててください」
「わかった」
レイアは言われた通り青い水晶に手を当てる。どうやら身体の様子を読み取っているようだ。魔界でもそうだが、この世界は、たまに前の世界よりすごい技術がシステム化されているような気がする。魔法の恩恵なのだろうか。
「ありがとうございます。準備が
私はレイアの方を見て話しかける。
「そうじゃな、この様子だとそう時間はかからないじゃろう。待つとしよう」
まだ少ししんどそうなレイアを先導し、私は
「ありがとうタクト。そなたも座ってくれ」
レイアは
指定された診察室の扉をノックすると、入るよう呼ばれる。扉を開けると、部屋にはダークエルフと
部屋は草色のレンガ
「どうぞ中へ。 付き
サキュバスの
しばらくして、診察室の扉が開き、
「付き
私は案内を受け、診察室に通される。レイアがちょうどドレスを着終えたところで、患者用の
ダークエルフの医師は自分の机の
「タクトさんですね。私は診察医のエルミールと申します。この
「あ、ありがとうございます。はじめまして、タクト=ヒビヤです。
「ご心配な気持ち、
エルミール先生の
「魔王様に問診し、身体の状態を
私は少し身構え、エルミール先生の言葉を待つ。
「おめでとうございます。 魔王様はお子様を身ごもっております」
えっ!? 頭が真っ白になる。
「えええええっ!!!!!」
エルミール先生の診断に驚きが
「な、何を
私の問いに、レイアが流し目で答える。
「わらわとそなたの子ができたと言っておるのじゃ。何を驚くことがあろうか?」
「まだ
エルミール先生がレイアを補足して説明する。私の子だと?
「それが本当だとしても、早すぎやしませんか?」
私は
「平均的な魔族の
エルミール先生の診断にレイアが答える。
「わらわは遅いと思っておった。もしかしたら子供ができぬ身体になってしまったのかと、不安じゃった」
レイアの言葉にエルミール先生が驚く。
「そうなのですか。レイア様のお母様も、それほど早かったとは記録にございませんでしたね。歴代の魔王様の記録でも、確か無かったと思いますよ」
「わらわの場合はほかの魔物を産み出したりしておるからのう。その感覚があるのかもしれぬ」
もはや人外の
「それで、生まれるのは大体いつ頃なんでしょうか?」
エルミール先生は私を見て答えてくれる。
「そうですねぇ。今の様子ですと、大体一か月後くらいでしょうか」
「えええええええっ!!!!!!」
早すぎる!!! どんな早くても十か月後とかではないのか!? まったく、魔族とは人間の物差しで
「取り乱してすみません。いくらなんでも早すぎませんか?」
「そうですね。ですが、中のお子様の様子からして、そのくらいかと。成長が
「わらわはそうは思わんぞ。魔物なら、その日のうちに産み落としておるからの」
レイアの基準がおかしいだけで、異常だと思う。という事は、
「そうなると、レイアが戦争に参加するのは
私の問いにエルミール先生は少し考えて答える。
「そうですね。
「そうじゃな。わらわもそうするよう努めよう」
「わかりました。ありがとうございます」
とりあえず浮かんだ疑問は解決した。驚きが嬉しさを上回っていたが、気が
「最後に、
エルミール先生がレイアに専用の特殊な
帰りの受付を
メイド達が私とレイアを
「じゃあ、ゆっくり休んでほしい。身体、大事にしないとな」
「感謝する、タクト。そなたの子を身ごもれて、わらわはすごく嬉しいぞ」
レイアの笑顔が
「レイア、さっきの戦争の話なんだけど」
「どうした?」
「私は
「ああ、その事か。わかった。指揮は
「ありがとう、レイア。レイアが休んでいる間、私はできる事をやっておくよ」
「うむ。あまり無理はするなよ。わらわは少し休ませてもらう」
レイアはそう言うと、メイド達に連れられ、私室の寝室へと向かう。レイアと別れた私は、私室ではない目的の場所へ向かうつもりだ。
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