第27話 「フィナーンの逆襲~Sideレイア」
「タクトのやつ、遅いのう。時間がかかっておるのか?」
珍しくタクトの戻りが遅い気がする。妙な
第八階層辺りまでの様子をモニターに映し出してみる。モニターが現れると、それらしきものが映っているかを検索する。
「む? 何か動いておるのか?」
この階を映すあるモニター映像に目が
じゃが、ここはトイレではないな。あれはフィナーンとタクトか。何をしておるのじゃ?
『おい! 人間』
『君は…… 何でこんな事を?』
『わからぬか!?』
フィナーンのやつ、何を言っておるのだ?
『貴様は魔王様をたぶらかし、私のプライドをズタズタにした。私に二度の敗北と、
何か状況がおかしい。何をしようとしておるのだ?
「おい、メイド達。しばし外に出て待機しておれ」
「かしこまりました。魔王様」
わらわの指令にメイド達が部屋を退出する。念の為じゃ。再びモニターで状況を確認しよう。
『貴様、この
お!? フィナーンのやつ、付けてる胸当てを取り去りおった! 何をする気じゃ?
ん!? タクトのやつ、また鼻血を出しとるな。さてはフィナーンに欲情しおったか。
『あんたに
「おおおおお!!!」
フィナーンめ、抱き着いて告白しおったわ!! なかなか大胆な事をしおるのぉ!!! よいぞ、よいぞ!!!
『お前、私が魔王の夫になったと……』
『
むむむむ!!! どうするタクト?
『どうなんだ!』
タクト、行け、行け!
「どうするのじゃ?」
『そうか……』
何を思っとるんじゃ? もどかしいのう。
『わかったよ……』
おっ! よし!! 行くか、行くか……
『言葉じゃ足りないだろ。だから……』
むむ! おおおおおおおおおお!!!!!!
「行ったぁ!!!」
よし!!良いぞ!!! さすがはタクトじゃ!!ようやった!!!
◆◆◆
ハァハァハァハァハァハァ……
まったくあやつら、見せつけてくれおるわ。実に良き、良きことじゃ!
『なあ、タクト』
『ん?』
『なぜ、私を抱いたのだ?』
確かに。なぜじゃのう?
『それは…… 私に
『え!?』
『君の気持ち、断れないよ』
ほう。
『何だそれ、別に断ればいいじゃないか』
『断れないんだよ!!』
む!? なぜ怒っておるのじゃ? 気になるのう。
『怒鳴ってごめん。私には、断れなかった。それに、君の流した涙。そして
「ふむ」
『正直、レイアには悪い事をしたと思う。でもあの時の君の顔を見たら、断れなくなったんだ。君を受け入れて、力になりたいと思った』
ん? 何も悪くはないがのう。むしろ良き奴だと思うたぞ。タクトらしい動機じゃしの。
『愛の形としては間違ってるかもしれない。でも、勇気を振り絞って告白してくれた君の気持ちに
おおおおおおおおお!!!!! げに恥ずかしげもなく! タクトめ、言いおるわ!!!
ハァハァハァハァハァ……
『バカだな、お前は。でもそういうところ、私は好きだよ。魔王様を裏切らせて、悪かったな』
うんうんうん。そうじゃろう。フィナーンもタクトの良さが分かったようじゃのう。じゃが、わらわを裏切ってなどおらぬぞ。
『そう思ってるのなら、これから一緒に
『それは断る』
何を二人して笑っておるのじゃ? 分かり合えたようで、何よりじゃの。わらわに
『タクト、今回の事でもし子供ができたら、可愛がってくれるか?』
『えっ!? 子供?』
「子供じゃと?」
フィナーンのやつ、何を言っておるのだ? そのくらいでは、子供はできぬじゃろうて。マリリスはもっと長く交尾せねばのう。
『どうなんだ?』
『も、もちろんだ。だが、その前にレイアに言わないとなあ』
「は?」
タクトのやつ、何を言っておるのだ? わらわに何を言うのじゃ?
『なんてな、冗談だよ』
『ええ!!』
『このくらいの事で子供はできないから、大丈夫だ』
『そうなのか、びっくりした』
そりゃそうじゃろ。タクトのやつ、まんまとひっかかりおって。
『ところで、タクトは魔王様のどこに
『最初は、魔王の間でレイアを初めて見た時に、その完璧な可愛さと美しさに
「おおおおおお!!!!」
タクト、そうじゃったのか!!! まあ、わらわは美しいからのう。よくわかっておるわい。
『でも、ほかにもそういう魔物ならいたんじゃないのか?』
『いや、それがそうでもないんだ。レイアだけが、私にとって特別に見えたんだ。魔物も、今まで出会ったどの人間にも感じなかった美しさを持っている』
うむ。そうじゃろう、そうじゃろう! タクトは目の付け所が違うのじゃよ。
『それに、ほかのメンバーにはレイアはそうは映ってなかったらしい』
「そうなのか?」
わらわの美しさがわからぬとは、まったく。 まあ、その前にわらわは魔王じゃしのう。仕方あるまいか。
『さすがは魔王様にプロポーズしただけの事はあるな。
『えへへへ』
何を
『でも今は、レイアのすべてが好きなんだ。レイアの言葉、レイアの気遣い、レイアの考え方。全部好きだし、愛してる』
「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
まこと恥ずかしい!!! じゃが、良い気分じゃ。タクトよ、
『そこまで魔王様の事を!! 私も魔王様には絶大な信頼と感謝、そして忠誠を
『すごくわかるよ。あんな尊敬できる素晴らしい魔王はいないよ。レイアが究極で
「おおおおおおおおお!!!!!」
ハァハァハァハァハァ…… もっと
『魔王様の偉大さをわかるとは、さすがだな。魔王様が認められただけの事はあるな』
うんうん、そうなのじゃ、そうなのじゃ。やっとお
『これからもレイアの事、支えてあげてほしい』
『当然だ! 私は全身全霊で魔王様をお支えする。心配するな』
「うむ。頼りにしておるぞ」
『ありがとう、フィナーンさん』
『礼には及ばない。それに私の事はフィナーンでいい。すっかり長居してしまったようだ。失礼する』
フィナーンのやつ、出て行きおったか。満足したのじゃな。
しかしタクトの遅い原因は理解できた。魔族のフィナーンを思いやる優しさ、見事じゃった。
わらわを裏切ると言っておったが、また戻ってきたら聞いてやるか。見たところそんな
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