第4話 「会合」

 久々の勇者の家。ここに来ると皆、落ち着くことができた。イグノールは応接間へ皆を案内すると、それぞれ席に着く。


「さて、みんな席に着いたし、話を始めるとするか」


 イグノールが話を切り出す。


「まずはタクト。皆を代表して、この前の非礼をびる。本当にすまなかった。そして、先に話してくれて、感謝する」


「ああ、そうだな。みんなを国王の前で騒ぎにしたくなかったから。私の方こそ、唐突に話してしまってすまなかった」


「何を謝ってるの。助かったのは私達だ。謝る必要などない」


 クローディアがたしなめる。


「そういうお前はかなり国王にみついてたじゃないか」


 バルドスが笑いながらクローディアに言い放つ。


「聞いていてムカついたんだから仕方ないだろう! いくら国王陛下とて、魔王を討伐した我等に対して不敬だろうが!」


 クローディアが怒りをあらわにして反論する。


「まぁ確かに。もう少し言い方がありますよね。少しはねぎらってほしかったです」


 メリエラが国王の様子を思い出しながらあきれた様子だ。


「まぁ国王陛下についてはそのくらいにして、問題はこれからどうするか、だ」


 皆を落ち着かせつつ、イグノールは続ける。


「俺は、王国と中立関係にあるミレアム領の領主に会いに行き、スカウトしてもらえるか交渉してみようと思う」


「えっ!」


 クローディア達三人の顔が驚きの表情に変わる。


「実は、少し考えていたんだ。この戦いが終わってからの事。俺は勇者として生まれ、魔物と戦うことを正義としてきた。だから、人間同士の争いには関わりたくない。国の為、民の為に先頭に立って戦うのは、勇者の俺ではなく、英雄であるお前達だと思うから」


「イグノール、お前って奴は……」


 バルドスは少し涙ぐんでいる。


「そうだな、バルドス。俺はやはり、地上にく魔物を討伐したり、ダンジョンにもぐって強い魔物と戦ってる方が性に合っている」


「仕方ありませんね」


 あきれ顔でメリエラがささやく。


「みんなはどうする?」


 イグノールが一人一人の顔を確認しながらたずねる。


「私は付いて行く。行く当てなどないからな」


 クローディアが答える。


「俺も行くぞ。まだまだ倒し足りないからな。メリエラはどうする?」


「いいでしょう。私は魔術の研究と実践さえできればそれでいい」


 バルドスとメリエラも同意する。


「タクト、君はどうする?」


 イグノールが私にたずねる。三人も私の方を向く。


「私は……魔王城に戻るよ」


 皆が驚きの表情に変わる。当然の反応だ。


「なぜだ? 魔王城に戻っても何もない。どういう事だ?」


 クローディアがたずねる。


「すまない。理由は、言えない。でも、これだけは言える。私がずっと探し求めていたものが、見つかった気がするんだ」


「それが、魔王城にあるというのか?」


 イグノールがたずねる。


「ああ。まだ確実とは言えないが、間違いないと思う」


 私はうなずきながら答えた。


 やはり魔王の事は、イグノール達には言えない。彼らには悪いが、黙っておくことにする。


「わかったよ。じゃあ、俺達とタクトは、ここでお別れだな」


「あぁ。ここまで一緒に旅ができて、本当に良かった。ありがとう、みんな」


 私は皆に一礼する。


「いいってことよ」


「こちらこそ感謝する。タクトがいなければ、今生きているかどうかもわからなかった」


「タクトの魔法は素晴らしかった。もう近くで見れなくなるのはさびしいな」


「ありがとう。また会う事もあるだろう。その時はよろしく頼む」


「タクト、いつ出発する? 俺達は明日にも出発しようと思っているのだが」


 イグノールがたずねてくる。


「そんなに早いのか。わかった。では、私も明日に出発するよ」


「了解した」


「今から友人に会いに行ってこようと思う。いいかな?」


「ああ。また戻ってきてくれるか?」


「戻ってくるよ」


「そうか。では、戻ってきたら相談したい事があるから、聞いてくれるか?」


「わかったよ」


「すまないな」


 イグノールはそう言うと、私を送り出してくれた。支度を整え、私は友の待つ場所へ向かうことにする。


「それでは、行ってくる」


「行ってらっしゃい」


「気をつけてな」


「お元気で」


「待ってるぞ」


 私は玄関の外まで一緒に来て見送ってくれた皆に一礼して、テレポートを使用した。

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