第3話 「凱旋と断罪」
魔王を討伐した我々勇者一行は、グレーター・テレポートでクラヴェールの城下町まで移動した。
「さて、町や城のみんなに報告しよう」
イグノールが皆に言った。皆、笑顔で
「皆の者、魔王を討ち倒し、帰ってきたぞ!」
イグノールが
「ありがとうございます!」
「おかえりなさい、勇者よ!」
城下町の民衆達が我々を
町中が歓喜に包まれ、それはとても幸せな瞬間であった。
城へ続く大通りを歩いていた時、我々に歩み出てきた者達がいる。
「お帰り、よく無事に帰ってきてくれたな」
「お帰りなさい、皆さん。よくぞご無事で何よりです」
そう言って迎えてくれたのは、冒険者で戦士グレッグと、聖女エレノーラだ。
グレッグは冒険者ギルドで知り合った初めての仲間で、この世界に来て色々世話になった親友。
エレノーラ様は私を異世界召喚した聖女で、この国の
「ありがとう。グレッグ、エレノーラ師匠。
「わかってるよ。終わったら、ゆっくり話を聞かせてくれよ」
「ああ」
「楽しみに待っていますよ」
「またお会いしましょう」
私は彼らに別れを告げ、城で待つ国王のもとへ向かう。
◆◆◆
我々は城門前まで到着する。イグノールが城門の兵士に魔王討伐の報告をし、国王へ
「かしこまりました。勇者様が戻られたこと、報告いたします。長旅ご苦労様でした。従者を呼んでまいりますので、少々お待ちください」
しばらく待っていると、従者が現れ、兵士は我々を通してくれる。
「道中お疲れ様でございました。私がご案内いたします。ついてきてください」
我々は従者に先導してもらい、広い城内をゆっくり歩いた。
長い廊下を歩き、何度もたくさんある部屋を横に通過する。
三分ほどして、とある部屋の扉の前で従者が止まる。
「こちらの部屋でしばらくお待ちください。国王様の準備ができ次第、お声かけさせていただきます」
我々は待合室のような少し広めの部屋に通され、そこで待つことになる。
我々が住むような部屋とは違い、ゆったりと広く、家具や調度品も高価で、清掃も行き届いている。
我々は少し話をしていたが、五分程して、鎧姿の男が入室する。
「レガリック将軍、ご
「勇者イグノール殿、魔王討伐感謝します。準備が整ったので、案内させて頂こう」
「よろしくお願いします」
レガリック将軍はこの国の軍を率いる大将軍である。我々は将軍に先導され、国王の
やがて
「ここが
将軍はそう言うと、扉を開け、国王に
先ほどの部屋とは段違いの、
国王の護衛隊や重臣達が揃い、少し重い空気が流れている感じがした。我々は後に続き、部屋の中央へと歩みを進める。
将軍が
「国王陛下、魔王を討伐した勇者達を連れて参りました」
「うむ、ご苦労であった」
「はっ!失礼いたします」
そう言うと、立ち上がって一礼し、我々の少し後ろに控える。
「さて、皆の者、面を上げてよいぞ」
クラヴェール五世が優しい声で言った。我々は頭を上げ、国王の顔を見る。
「この度は、魔王討伐大儀であった。改めて礼を申す」
「陛下にそのように
イグノールが発言し、深々とお辞儀をする。
「我々一行は、七日間に及ぶ魔王軍および魔王クライスラインとの戦闘に勝利しただいま帰還いたしました。こちらが魔王の角でございます」
イグノールはインベントリから打ち取った魔王の角を取り出し、将軍に渡す。将軍から国王の前へ献上される。
「うむ。見事である」
国王は角を眺めてから、我々に言った。
「長旅ご苦労であった。二日ほど休んでいくとよい」
「恐れながら、それはどういうことでしょうか?」
イグノールが返す。
「うむ、そなた達のこれからの処置であるが、三日後、国外からの退去を命じる」
「えっ!!!」
我々は身じろいだ。国外退去。
事前に予想はしていたが、そうならないよう願っていた身としては、ここまではっきり言われると、やはり驚きを隠せなかった。
「それは一体どういうことですか?」
今度はクローディアが
「そなた達が討伐を成功させた時にどうするか、国の
「そんな理由で!
「そなた達の有している職も解く。今後一切の王国領内への立ち入りを禁ずる。異論は認めない。三日後には必ず退去するように」
「陛下!どうかお考え直しを!」
「やめろ、クローディア!」
イグノールが
「わかりました。陛下のお言葉に従います。今まで大変お世話になりました」
イグノールが落ち着いた口調で話す。
「わかってもらえて何よりだ」
少しの沈黙が流れ、
我々は立ち上がり、国王に一礼して
従者に先導され、城を出るまで我々は無言を貫く。
不満は皆同じだったが、誰が聞いているかわからない為の予防線である。
我々は案内してくれた従者や兵士達にそれぞれお礼の
城を出てからの皆の表情は重かった。無理もない。ここまでの処遇になるとは正直私も思っていなかった。
私は皆を連れてテレポートで勇者イグノールの家の前に飛んだ。
「ありがとう、タクト」
「いや、私こそ気の
「いいよ。話は家に入ってからしよう」
イグノールはそう言うと我々を家に迎えてくれた。
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