第45話 明智光秀&木下秀吉の密会

 この話だけ日付が約3ヶ月進んでます。


 1570年12月26日 18:00


 美濃国・岐阜城下町


【居酒屋・濃尾】


 織田家・商工部門で卸している清酒八海山が飲める店。

 美濃・尾張両国の郷土料理に加え、魚の天ぷら・フライ物、鶏の唐揚げが名物の居酒屋。


 その店の奥座敷に2人の織田家高級官僚が向かい合い、盃を傾けていた。


 木下秀吉

「明智殿、ほんにやっとかめ(久しぶり)ぶりだなも。」


 明智光秀

「ええ、木下殿もお元気そうで。」


 秀吉

「にぃしても、行政機関の最高責任者がこんなにえらい(しんどい)とは驚いてるがや。」


 光秀

「某もえらいwとは思いますが同時にやりがいもあり充実しておりますぞ。」


 *****

【すみません秀吉の尾張弁。

 調べながら書くの限界です。。。】

 *****


「はい!鶏の唐揚げお待ちどうさま~」


 秀吉

「おお~きたきた。これが食べたくて濃尾に通ってる。」


 光秀

「確かに美味いですな。

 最初は時を告げる鶏を食す等、畏れ多い事と箸が進まなかったが、1つ食べたところ衝撃の美味さに飛び上がったw」


「ふむしかし光秀殿、鶏は飛ばぬ鳥ですぞw」


「。。。そう言う意味では、して話と言うのは?」


「おや、光秀殿も上様のせっかちが移りましたかなw」


「"せっかち"。。滅多なことを言うもんでは無い。

 今や江戸幕府・初代将軍様にあらされますぞ。」


「まあまあ一献どうぞ。この味噌煮込みと味噌田楽も、飛びきり美味いでよ。」


「ふっ。。。相変わらず、人の懐に飛び込む天才ですな。」


 8ヶ月ぶりに会った秀吉であったが人懐っこさは変わらず、行政機関で連日多忙を極める光秀にとって、同じ立場の秀吉との会話は一服の清涼剤とも言えた。

 話せば話すほど、もっと話したくなる何とも不思議な男である。


 穏やかな時間が流れる中

「ところで明智殿は、このまま文官の立場に甘んじておる積もりですかな?」


「ぶっ!!と、突然!な、何を申される!」


 十分に会話も心も暖まったところで、いきなり核心に切り込む。

 秀吉が"人たらし"と言われる真骨頂を発揮し始めた。


「いやなに、戯れ言と思うて聞いて下され。

 明智殿も、この秀吉も、上様から重要なお役目を頂戴致し、それを実行に移す。

 何ともやりがいのある、充実した毎日を過ごしておりまする。

 が、しかし最近、寝る前にふと"物足りなさ"を感じる自分が、頭を覗かせておるのもまた事実!」


「!!がっ!!!」


 後頭部を殴られた様な衝撃を感じた明智光秀!!


 織田家中で1,2を争う生真面目な性格の持ち主を翻弄する事など、"天下の人たらし"にとって難易度はゼロに近い。


「文官の最高責任者としての達成感はあれど、その後ろ楯は紛れもなく織田家の軍事力。

 どの国に行っても、かつての国人や領主、寺院や一向宗徒。

 先日などは"あの朝倉義景"公ですら、この農民上がりの秀吉の話に耳を傾け、あまつさえ"素晴らしい統治能力"と絶賛する始末。。。」


 光秀は飲み食いするのも忘れ、秀吉の話を食い入るように聞いている。


「金ケ崎城攻めの折りに"光秀殿"と2人で、15万の大軍の武器弾薬・兵糧等を用意する責任者を命じられ、大商人や農家を飛び回っていた時の充実感!

 あれは正に戦に直結している役目を果たしているからこその、喜びでござった。」

 秀吉は然り気無く

 "明智殿"から"光秀殿"に呼び方を変える。


「!!!それだ。。。それだったのか!!!」

 やっと己の心の何処かに常にあった、霧が晴れないモヤモヤした思い。

 それが何なのかずっと封印してきた光秀だったが、秀吉に導かれ気付かされてしまった。


 秀吉

『ふふふ、もう一息だな』

「年明け早々、家臣団新年会の席にて、織田信忠・関白殿下の直臣に推挙、もしくは名乗りを挙げる機会が訪れるのは周知の通り。

 農民上がりのワシと違い光秀殿は斎藤道三・足利義昭・朝倉義景公等の元で、幕府や朝廷の仕来たりにも明るく、関白殿下の直臣には相応しいかと。」


「関白殿下の直臣!!」


「そうよ、直臣よ、ワシら2人の内政は折り紙付きだしなあ。

 むしろ断る理由が見当たらん。

 仮にその地位に座ることさえ出来れば、上様の下では可能性の低い前線への復帰が叶うのではないかな?」


「。。。もしそうなれば。。万単位の軍勢を動かせるか。。。」


「それはそうだろう。関白殿下の軍勢ですぞ、数千等あり得ませんなあ。

 ましてワシ等2人はその数の指揮官として経験もある。

 そこで結果を出せば、如何に上様とて無視は出来まい?」


「。。。確かに。。江戸幕府を創設したとは言え、天下統一にはまだ戦の場は残っている。。」


「九州でも東北でも光秀殿が城を落とし、そこの支配権を獲得すれば、領地は無くとも莫大な扶持が手に入る。

 毎年軍資金を溜め込んで5年後、いや焦らず10年後でもよい。

 いつか機会がくるやも知れませぬぞ。」


「機会!!とは?」


 光秀の問いに直接は答えず、遠回しにじわじわと追い込み始める。

「今思えば姉川戦終了後の領地召し上げ扶持払い決定後、内政担当に配置を変更されたのは光秀殿とこの秀吉の2人のみ!」


「つっ!!確かにそれはそうだが。。。」


「いやなにワシも秀長も上様から頂いた内政が性に合っており、そこに不満は無い。何しろあの屋敷!!

 あれはもう出て行くのは無理じゃw」


「ああ。某の家でもあの屋敷が無いと、もう生きて行けぬと皆が言うておる。」


「その通り、夢のような快適な生活だ。だがのう光秀殿ワシは思うのだ。上様流に言えば"適材適所"ではあるが、これはある意味"飼い殺し"ではないかと?」


「うっ!!うむ。。

 "飼い殺し"とは正に言い得て妙!」

 真鯛の煮付けを1口摘み、八海山をグッと飲み干す明智光秀。


「ひょっとして上様は、光秀殿とワシを警戒しているのではないか?」

 そう言って光秀の盃に酒を満たし、エビフライをパクつく秀吉。


「警戒か。。。確かにあの後、家臣団を解散され軍事面から遠ざけられた。武将としては想定外の事ゆえ一瞬ではあるが、足利幕府の細川殿を頼ろうかと思ったりもした。。。」

 秀吉の"人たらし"ペースに乗せられ酔いも手伝い、うっかり当時の本音を語ってしまう光秀。


『やはりそうかニヤリ』

「ほおほお奇遇ですなあ、ワシも蜂須賀 正勝小六、前野長康等の家臣団と切り離された時は"出奔"しようかと悩んだものよ。。。」


「"出奔"とな!!織田家出世頭の木下殿がそこまで考えてたとは。。。」


「業務補佐の名目で10人の家臣を上様から派遣され、仕事上は大いに助かってはおるが。。。」

 ここで秀吉は光秀の耳元に近寄り小声で呟く。


「あの10人は優秀だ、いや優秀過ぎる。。おそらくはワシ等2人の監視も兼ねておるぞ。」


「。。。監視されるような後ろめたい事など、何一つ無いというのに。。。」


「ああ、ワシもそうだ。そうだが。。。最近の上様は人が変わったように家臣への当たりも柔軟になり、去年までと比べて説明もしっかりと細かく言葉にしておる。

 ワシはいちいち説明をしない上様の意図を読み取るのが得意であった故に、他の家臣に差をつけて来れたのだがなw」

「そこのお姉さん!八海山を1本追加と"焼酎ソーダ"を貰おうかの~。それと揚げ出し豆腐も2つくれ。」


「毎度あり~」


 もうペース全開!場の主導権は完全に秀吉が握っている。


「だがな光秀殿、あの上様だぞ。第六天魔王を自称なされていた恐ろしきお方だ。。

 またいつ本来の上様に戻るか?それは今日かも知れぬ。。

 癇癪かんしゃくを起こし難癖付けられ職を解かれる。当然あの屋敷も追放されるであるう。

 そうなった時に頼れる家臣もおらず、軍事力の無い今のワシ等2人に生き残れる道はあるのか?」


「それは。。無理だな。。。」

 小さな盃からグラスに代えている光秀は、八海山を一気に飲み干し手酌で酒を満たす。


「まずは光秀殿が何とか織田信忠・関白殿下の軍勢に入って貰いたい。

 ワシと2人同時に直臣への名乗りを上げると、関白殿下はまだしも"上様"の事だ。疑惑の目を向け監視の目を増やすとも限らん。」


「それで良いのか?"秀吉"も武官に復帰したいのであろう?」


「先手必勝を実践して生きてきたが相手が上様だ。ここは急いては事を仕損じる。じっくり構えたい。」


「。。。なるほど。。首尾良く行かぬ場合でも、某だけが矢面に立ち、自分は安全との計算かw流石は出世頭w」


「なっ!!何を申される"明智"殿も人が悪い。。」

『くっ!流石は切れ者。。あっさり見破られたか。。。』


「ふはははは"光秀"殿から"明智"殿に戻ったのかw"秀吉よ"お見通しだぞw」


「ぐうぅ。。。」

『くそっ!5本も飲んで酔って無いのか?』


 天下の人たらし秀吉も、深慮と狡猾さを併せ持つ才能豊かな明智光秀にどうやら、してやられた様である。


「まあだが良い。己のもやもやした気持ちの正体が、武官への道を望んでおるのが今日はっきり分かったからな。。。寧ろ礼をいう。」


「おっ、おお~そうか。。。」

『何を考えている?』

 警戒心マックスの秀吉


「はははそう警戒するな。関白殿下の直臣に名乗りをあげ、仮にそれが許されたとしよう。

 だがその席には上様もいらっしゃる。その場で"配置は殿下の文官筆頭を勤めよ"等と申されるやも知れぬ。そうなると武官復帰の道は永遠に断たれる。

 だがそれならそれで、まだお若い殿下へ戦の献策等してやれば、関白軍の軍師の地位に就けるやも知れぬ。」


「軍師。。滝川一益殿がおられますぞ。」

『ふう~どうやら武官への就任は望んでおるようだな。。。驚かせよって。。』


「滝川殿は殿下の海軍を指揮しておられる。土佐を本拠地として、毛利の瀬戸内、大友・島津等と九州の海で多忙を極めておるとの話だ。

 今は四国の地にて、丹羽殿の侍大将をしている内蔵助齋藤利三から色々と書状が届き、内情の把握は出来ている。」


「滝川殿が海を、明智殿が陸をですかな?」


「ああ、それが第1歩だろうな。」

 揚げ出し豆腐に最近織田領内で流行りだした、"七味唐辛子"をかけ八海山と共に流し込む。


「第1歩ですか。。。」


「急いては事を仕損じると言うたのは秀吉であろうw」


「それは。。。確かに。。」


「とにかく今はそこから始めるしかあるまい。あの空飛ぶ鉄の箱。

 あんな物を相手にしては、何十万の軍勢がいても勝ち目は無い!

 某はあれの指揮官になりたい。

 故にあれを活用した軍事戦術・戦略を研究している。

 軍事は言うに及ばず、内政でも多大なる力を発揮する空の軍勢。

 10年後に殿下直属"空軍組織"の指揮官をしておれば、戦の最前線に立てるはず。

 上様の下では永遠に叶わぬが、殿下の下なら一縷の希はあると信じる。」


「では?」


「ああ、名乗りをあげてみよう。今の話を基にして枝葉を付けてみろ。それが"人たらし"の最も得意とする分野であろうよ!わははははw」


「ほんに"光秀"殿はお人が悪いw」


 明智と"豊臣"

 史実で織田家から天下を掠め取った2人の共闘。

 始まったばかりのそれは

 まだ小さな火種【武官復帰】に過ぎぬが、やがて大火の炎【信長親子の暗殺】となり織田家中を包み込む事になるのか???


 なんせこの2人には、これがしてますからねえ~

 *****

【第29話参照】

 念のためステルス偵察ドローンも24時間体制で密着している。

 *****


 信長

「ふん!猿知恵か!大たわけが。。」


 濃姫

「今すぐ時間加速エリアへ収納して、老衰寸前で放り出しますか?」


「。。。恐ろしい事をサラッと言うな。。。」


「やはりあの2人、織田家の疫病神です。」


「それもあるが、まあ収納は何時でもできる。

 文官としてだけでは無く、軍事面でも光秀の頭脳は半兵衛と並び織田家中No.1だ。

 どんな空軍戦術・戦略を生み出すか?やらせて見る。但し余のもとでだ。

 人たらしのサルと光秀の2人は余の直臣として江戸に移す。

 関白殿下の信忠は、京都御所跡地の"関白御殿"で引き続き政務を取らせる。

 あの2人が信忠に接触出来ぬよう厳しく管理する。」


「2人の江戸での密会が、益々増えそうですね。」


「やりたいだけやれば良い。ステルス偵察ドローンの証拠動画が増えるだけだ。」


 本能寺の変を体験した信長の徹底した危機管理。

 火種は火種として終わるのか?

 今の私には分かりません。。。


 ーーーーーーーーーーーー


 光秀&秀吉

 何やら不穏な話でしたが

 これにて【第3章完結】にたどり着きました。


 織田信忠・関白殿下はプロット段階時点では全く浮かんで無く、書いてるうちに、その方が今後の展開が色々と膨らむかな?と閃いた次第です。


 さて【第4章】はこの45話から少し時を戻して、江戸幕府御膝下、武蔵国と上野平定。

 上杉謙信と連携しての北陸平定。

 北条家との対峙。何より気になるのが

 武田家重臣、馬場美濃守信春

 養女・美幸みゆき姫と信長との婚姻です。


 内政含め盛り沢山に描こうと思ってますので、何卒よろしくお願い致します。


【第4章スタート】

 まだ納得出来てない箇所は多少ありますが、ここで1週間ほど時間を貰うより明日も公開し、何なら後から編集しても良いかなと判断!

 ストックも10話ほどあるので尽きる迄は毎日更新を続行します。年末ですからねw


 年の瀬~の正月がやって来る!!毎年感じるけど速いなあ~

 紅白でYOASOBIを観たの先週だった筈だが?。。。


 ★★★は作者のエネルギー

 いくつあっても嬉しいですよw

 m(_ _)m



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