第43話 上杉謙信と江戸幕府とマカロン

 1570年9月30日 23:00

 越後国・春日山城


 上杉謙信

「むっ?来るか!!」


 シュン!


 織田信長

「流石だな。。正親町天皇にも気付かれなかったのに、御前という奴はwもしや毘沙門天の使徒では無いのか?」


「戯れ言をwまあ信長の場合、殺気とは全く違う、神力とでも申すか?何となくだw」


「早速だがこれを渡しに来た。」


「ふむ不思議な板だが?南蛮・伴天連のガラスなるものか?」


「似たような物だが遥かに便利だぞ、こう使う。」


 信長は取り出した2個のスマホに電源を入れる。

 何が始まるのか?じっと見詰める謙信公。


「まずは基本のTELとメールからだな。」


「トウルルル、トウルルル」


「なっ!音が鳴っておる?」


「よく見てろ、こうするんだ。」


 TELの取り方に、かけ方。そして実際に会話をしたのだが。


「神だ!!やはり信長様は神なのだ!!」


 また拝もうとするので


「よせ謙信!渡すのを止めるぞ!」


「うっ、ああ済まぬ。。しかし何という物を持ってくるのだ。。お主といると頭がおかしくなりそうだ。

 それでこのスマホなる物、どれ程の距離で話せる?」


「このまえ話した我等が住んでる地球。そこなら何処でも通じるぞ。」


「地球の何処でも。。。」


「分かりやすく言えば、京の都と春日山城でも話せる。」


「!!!そんな恐ろしい事が。。。」


「これを渡すのは帰蝶以外では謙信が初めてだ。こんな物があれば戦も商いも根本から変わる。」


「そうだな。。。城に居ながらにして、敵方の様子が手に取るように分かる。忍びや物見等からの情報がすぐに届く。

 他国の米相場とて同じこと、いくらでも有効な先手が打てる。」


「ああ。俺が突然現れるのも良いが、来られる方は驚いてしまう。止めて欲しいと帰蝶にも言われておるでな。」


「左様か、しかしこれは他人の前では喋れぬな。物の怪かと気味悪がられる。。」


「相変わらず鋭いなwそこでだ」


 信長はメールや留守録機能、写真・動画の取り方、送信方法等を丁寧に教える。


「。。。こんな小さき道具で、動いておる自分を見れるとはな。。。」


「これで連絡が密にできる、早速報告があってな。」


 信長は

 武田勝頼謀反のいきさつ、信玄の撤退により遠江・駿河を支配した事。

 今日、武蔵国にも城(ドーム)を構えた事等々を説明。取って置きの話は後の楽しみにして、先に懸念事項を謙信に聞いた。


「対武田のために、去年結んだ北条との越相同盟はどうなんだ?

 今年4月から氏康の息子が上杉景虎と名乗っているが?跡継ぎにするつもりなのか?」


「いや、跡継ぎの件はまだまだ先の話で決めておらぬ。甥の景勝も優秀で悩みどころだ。

 我は越後国を纏めて行ける人材にしか跡は取らせん。そこに血筋は考慮しない。養子にして上杉姓を名乗らせれば良いだけだ。

 家臣の纏まり具合から景勝が有利ではあるが、中々どうして景虎の内政に対する見識も頭抜けておる。あれは化けるぞ。」


「そうか。戦時の景勝、平時の景虎、嬉しい悩みだな。

 それでな、信玄公とは近々、和平に向けた会談を行う予定だ。右腕の回復具合にもよるが、余としては2週間後を目処としておる。」


「!!織田と武田が結ぶのか?」


「勿論その時、織田上杉が同盟を組んだ話をする。越後に攻め込んだら織田は甲斐信濃を平らげるとな。」


「そ!そうか!!それは有難い。」


「だがな謙信。悪いが関東は織田が平定する。

 北条では関東から戦は無くならん。

 それと氏康殿はもう持たんぞ。

 影部隊の報告だと来年夏を越すのは難しいらしい。

 織田家はこの3日以内に武蔵多摩・府中・秩父を平定する。

 その後は武蔵松山、上野の沼田城、厩橋城も無論だ。

 武蔵国・上野国を10日で平らげる。

 当然、上野におるお主の配下を殺しはしない。負傷はするだろうが織田で治癒させる。

 これが前に話した天下布武統一の東日本の1歩になる。」


「そうか、いよいよ動き出すんだな。

 しかし2週間前に我が話した事、忘れているようだぞ信長。」


「ん?それは?」


「織田の戦で役に立てるなら、我の越後兵幾らでも貸すと言うた筈だ。

 まずは上野国の上杉兵!沼田城、厩橋城から即刻越後へ撤退させよう。

 冬も近づいて来ておる故に、兵士達も喜ぶであろう。

 だが大名の軍勢が誰も居ないのでは、またぞろ国人衆が乱暴働きするとも限らぬ。

 直ぐに織田の軍勢を入れてくれぬか?守るだけなら上野国全体で1万もおれば大丈夫だろう。

 我から明朝すぐに通達を出そう。

 それと!!武蔵の戦!!

 何なら!!いや是非とも武蔵国との戦の指揮、我に任せい!!小田原まで攻め上がり、今度こそ北条氏政の首挙げて見せる!!」


「いや、違うだろ!!落ち着け!!謙信。。。」


「何故だ信長、何を遠慮している。景虎なら本日即刻縁を切り、北条に送り返すから懸念には及ばぬが?」


「。。。お前なぁ~少し話を聞け。まずはこれでも食せ。」


 信長は収納から帰蝶が出した、東京駅地下グランスタ東京・ラデュレのマカロンを取り出す。


「甘い物を食べて、先ずは心を落ち着けろ。その黒い飲み物はコーヒーと言う。

 独特の苦味はあるが、そのマカロンなる甘い焼き菓子と良く合うんだ。」


「ふむ。確かにその黒い飲み物から、落ち着く香りがする。いただこう。」


 マカロンを1口食べた謙信

「ぐっ!!!これは!!!」

 止まらない!ノンストップ!皿に出したマカロン3個は秒で消えた!

 物欲しそうに信長の皿に目が行く"越後の龍"。


 信長

「。。。。。。。」


 ポン!

 追加で5個出してやると拝み出した。。。


「コーヒーも飲んでみろ」


「うむ。ゴク!!!!!!!」

 また拝んでいる。


 信長

「。。。。。。。」


 謙信に2杯目のコーヒーを出した信長は、取って置きの話を伝えた。


「明日10月1日、武蔵国に織田幕府、正式名称は幕府を創設する!!」


 謙信

「!!!織田!!江戸?幕府???」


「そもそも関東が乱れておるのは古河公方の存在だ。元は鎌倉公方であり、幕府役職としては正式な存在ですらない。単なる将軍の代理という位置付けなのだぞ。

 それを上手く使って成り上がってきたのが後北条家だ。

 一番悪いのは足利家だがな。

 京都で幕府を開いたのは良いが、将軍が関東の政を丸投げするのは、多忙ゆえ致し方無いにしてもだ。

 少しは心にとどめる姿を見せてやれば良い物を、気にも留めない故ややこしくなっておる。」


「うむ、そう言う我もその古河公方の補佐である関東管領に就任しておる。。。少し耳が痛いがな。。」


「900年も古の壬申の乱。

 以来、不破関・鈴鹿関を設立し、それより東に位置する国を夷狄いてき・野蛮人扱いするから、何時までたっても纏まらん。」


「野蛮人か。。。帝への忠誠心に嘘偽りなど無いと誇れるのだがな。。。」


「ああ、お前は確かにそうだろう。だが公卿や足利義昭はそんな事は微塵も思ってやしないぞ。

 その証拠に鎌倉公方の後身である古河公方しかり、ましてや謙信が勤める補佐役の関東管領。。。どれもいまだに室町幕府正式役職として、書類上では公に認めておらぬ!!

 つまり京の都から己の汗を流さず、関東を支配下に置くための足利将軍家の悪しき、そして古き政治体制である!

 そんな物は室町幕府ごと叩き潰してやる!

 謙信!お前はその程度の器では無いぞ!もう少し自覚しろ。」


「確かにそれを言われると一言も無い。。古河公方を誰にするかで、昨年初めまで北条家と戦をしていたからな。。。」


「関東10か国を巻き込んでな。。これでは何時までたっても関東の戦乱に引きずり込まれ、肝心要の北陸平定等出来ぬぞ。

 いまだに越中に手こずっておるのも当たり前だ。

 上杉家には江戸幕府軍として越中討伐の先鋒を任命する。

 大城達と鉄鋼軍艦で海から攻めろ。陸は俺が加賀から攻め上がる。」


「加賀から!!同時進行か?」


「当然だ!それだけでは無いぞ。越後国背後の出羽国・陸奥国にも、織田幕府軍を駐屯させて上杉軍の後方の憂いを無くしてやる。

 佐渡国には余が嫡男・織田信忠殿を"提督"として織田直轄海軍艦隊を派遣する。

 雑田本間・羽茂本間・河原田本間の居城と港や船など全て破壊する。

 民衆のために漁船には手を出さないが、艦隊は浮かべたままにしておく。

 初仕事は明日からの武蔵と上野の平定。

 それに上杉軍の準備が出来次第、加賀・越中・能登の平定!正親町天皇から勅命も賜っておるぞw」


「嫡男が関白殿下!!それに帝からの勅命だと!!!」


「ああ、加賀・越中の一向衆を正式に"朝敵"とする。

 石山本願寺を見てみろ。余の直轄部隊により僅か半年で復興を為し遂げ、今や宗教団体として立派に世の中に貢献しておるぞ。

 復興後も永久に織田家の管理下に置き、僧侶は連日修行で見識を高め今月から2割の税も納めさせておる。

 これこそが本来宗教のあるべき姿。

 世に乱れを起こす加賀越中の一向衆とは別物だ!」


を賜った軍の先鋒を、我に任せてくれると言うのか?」


「勿論も賜っておるぞ。」


 そこで信長は収納から正親町天皇の"勅命"が書かれた命令文書・詔勅みことのりを取り出し謙信に手渡した。


「あ、あああああ~帝の署名と内印が押されておる。。。何という誉だ畏れ多い。。。。。」


 余りの栄誉に自分を見失い、狼狽している謙信に止めを刺す信長。


「これだ!」

 続けて"錦の御旗"御登場である。


「おごおおおおお!!!」

 御旗の前で土下座をしたまま1ミリも動かない上杉謙信。


『少し薬が効きすぎたか?そこまでとはな。。。(汗)』


「おい、何時まで畏まっているつもりだ。しっかりせぬか謙信!!

 帝の勅命を受けての江戸幕府初仕事であるぞ。

 将軍の余が加賀からの上杉謙信が越中から、それぞれ朝敵を討つのは当たり前であろう。」


 ようやく頭を上げた謙信

「あ、ああ~~。。。ん?今なんと?」


「wだからと言ったんだよw」


「ふ、ふ、副将軍!!!誰が?」


「お前だよ!越後の毘沙門天・上杉謙信・副将軍殿!」


「。。。。。。。」


 帝の勅命と錦の御旗を持つ軍勢の先鋒と言われ、顔が青ざめていた謙信。

 更に江戸幕府・副将軍の地位を告げられた今、青を通り越し真っ白な顔色になった。。。


「マカロンもっと食うか?」


 首を上下に振り肯定しながら

「う、う、上様!コ、コーヒーも頼みまする。。。」


 どうやら酒豪の副将軍様は

 酒よりもマカロン&コーヒーの魅力に取り憑かれたようでした。

 まあその方が健康的かな?でもマカロン1度に10個以上は、肥満体型になりそうだからほどほどに。


 ーーーーーーーーーーーー


 ここで言う関東10か国とは


 武蔵・上総・下総・安房・常陸・上野・下野・相模・伊豆・甲斐である。

 信玄公の甲斐も関東扱いだったのですね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る