第35話 お市の方と南光坊 天海

1570年9月28日 11:00


*****


濃姫

「私の願いはただ1つ。

浅井長政殿、横山城から家族の元に、お市・茶々・初の元にお返し下さい。」


そして織田信長はたった一言

「。。。。。ならぬ!!」


*****


このやり取りから、かれこれ5分以上、新岐阜城・信長&濃姫2人の個室を沈黙が支配していた。


何かしている時の5分は大したこと無い時間だが、2人きりで向き合っての沈黙の5分は、とてつもなく長い。。。

まして濃姫に至っては土下座しているのだから。。。


「はぁ~帰蝶。。いい加減頭を上げよ。。首も腰も痛くなる。そうなっては余の話を聞けぬだろう。」


「いいえ殿!私の願いを聞き届けて下さるまでは、ただひたすら頭を垂れて待つのみで御座います。」


「だからそうでは無い。。長政は備蓄の飲み水が切れた先々月の7月20日、既に収納しておる。長政以外の浅井兵士も同様にだ。

いまだに横山城の囲みを解かぬのは、世間に織田相手に籠城しても無駄。

飢え死にするだけだと広く知らしめる為!

だから囲んでる兵も今月からは織田警備保障SP部隊から1,000人と、偵察攻撃型ドローン10機のみとしておる。

それも明朝、織田空軍・爆撃機B-2スピリットの空爆で終わらせ更地に変える。

城内"もぬけの殻"だが近隣住民からすれば、爆撃で浅井軍は全滅したように見えるであろう。」


「そうなのですか!!」

やっと土下座を解き頭を上げる濃姫。


「今日まで私にも黙っていたのには

きっと、深い訳があると言うこと。

1つだけ御伺いします、長政殿は達者なのですね?」


「ああ、元気に修行に励んでおる。」


「修行!!もしや剃髪?」


「そうだ。。修行が終わるまで誰にも言わないでくれと、本人に固く口止めされておる。

故に多くを語ることは出来ぬのだ。

裏切られたとはいえ1度は義兄弟となった仲だ。の決意を尊重してやるのもとしての責務よ。。」


「史実で三女の生誕は1573年8月です。それだけは叶えて差しあげたい。。

後3年足らず。。間に合いますでしょうか?」


「修行期間は十月十日とつきとおか。これには長政が生まれ変わるとの意味が含まれているそうだ。」


「期日的には問題無いですね。あとは市を含め家族の気持ち次第。それまで私は伊丹の地で懸命に生きる市・茶々・初を見守っていきます。」


「伊丹トリプルタワーの帰蝶総合クリニックで生き生きと働いているな。市があんなに労働意欲があるとは驚いた。」


「長政殿の事を忘れようと必死なのです。。でも類い希なる記憶力を持っていますので、このまま経験を積めば良い産婦人科の女医になれますよ。」


「ほおそうか市が医者か。。。長政の修行は7月22日に始まった故、十月十日なら来年の61で終了する。皆まで言えぬが沢庵和尚に預け、とある場所で朝から晩まで励んでおる。」


「来年修行が明けたら、1度家族水入らずで会わせてあげたいもの。。。」


「トリプルタワーの織田家専用温泉を貸し切りにして、2~3日ゆっくり過ごさせるつもりだ。

その後の人生どう生きるのか?慌てずに考える切っ掛けとなれば良い。

後は明日の横山城落城の噂、いずれ市の耳に入るだろう。それに絶望し間違いがあってはならぬ!

今宵夕食後に市に話そうと思う。長政には悪いがこれだけは譲れん!

せっかくゲネシスに本能寺から救われた人生。もう後悔先に立たずは懲り懲りだからな。。

同席してくれるか?帰蝶」


「はい喜んで♡

やはり詳しく説明をなさる今世の貴方様は、素敵な殿方で御座います。」


素敵と言われ照れた信長は思わず口癖の

「であるか。。。」


「。。。もう。。。だいなし。。w」


**********


1570年9月15日

話は少しだけ遡ります。


丹波の波多野秀治は足利義昭を奉じ上洛した信長に従っていたのですが、今世の信長の将軍家への態度に反旗を翻し、八上城に波多野3兄弟で籠城してしまった。


だが信長の領地は召し上げるが、織田金貨での扶持払い政策。

その金額の多さに、1度は降伏の腹を決めたのだが。。。

2人の弟、秀尚・秀香の反対にあい捕縛され地下牢に幽閉される。


偵察ステルスドローンの報告でそれを知った信長は波多野秀治を収納に保護。

門と塀を収納で消し去り、掘りは大量に在庫している土砂で埋める。

そこに宮城第10軍団長3万のAPC9兵が雪崩れ込んだ。

僅か15分ほどの総攻撃で立っている兵はいない。

信長の温情で全員足を撃たれ、立てないだけだが、まあ痛みは相当なものである。


泣きわめく波多野兵達に「次は頭が穴だらけになるぞ!」と散々脅し心を折ったところで濃姫登場!

武装解除した兵達をチートエリアヒールで一瞬で治す。


ここに丹波・波多野家は滅亡。

素直に降伏し臣従していれば毎年、多額の扶持(織田金貨)を貰えたものを。。。後の祭りである。


**********


翌9月16日


1万5千の菅野軍と8千の河尻軍に囲まれ落城寸前の丹後国・一色義道の建部山城。


織田軍から八上城落城、丹後・波多野家滅亡の報を早朝からいた。


八上城の無慈悲残酷なマシンガン乱射で、倒れこむ波多野兵(本当は足を撃たれ倒れてるだけ)。

その生き写し絵は大量に鮮明カラープリント印刷され、オスプレイによるビラばら撒き作戦となる。


それでも踏ん切りのつかない一色義道に対して信長は、攻撃ヘリアパッチによるナパーム投下を実行!

20発のナパーム弾は城内の酸素を大量に消費していく。


酸欠状態でバタバタと倒れる一色兵!それを遠隔収納していく信長。

後で纏めて濃姫のチートエリアヒールで命を助ける策である。


追い詰められた一色義道の元に

河尻秀隆と菅野の2人だけを伴い城内に入る信長。

あまりにも大胆な行動に家臣に止められるが、偵察ドローンからの報告で生体反応30人、場所も特定されている。


攻撃:SSS+++

防御:SSS+++

剣術:SSS+++

神レベルステータスを持つ信長。

襲いかかってきた義道の側近十数人を瞬時に斬り伏せる。

「命を粗末にするとは愚か者共め、御前はどうする?一色義道!!」


「天罰だと噂を流し、比叡山延暦寺を攻め滅ぼした魔王風情が!!きさま等と少しでも誼を通じた自分自身が情けないわ!!」


「そうか!なら先手を譲ろう!参れ!!」


「うりゃーーー」


スパッ!

血飛沫が飛び散り首が舞う!


一色義道、史実より9年も早くその生涯を閉じる。

丹後国・一色家滅亡である。


この6月からの遠征で越前・若狭・丹波・丹後の4カ国を織田家は僅か3ヶ月で手に入れたのである。


**********


1570年9月28日 20:00

伊丹トリプルタワー帰蝶棟

59F織田家専用フロア

信長エリア


18:00から始まった夕食会も終わり、茶々姫と初姫は同フロアにある住居へ、侍女・護衛と一緒に下がった。

帰り際茶々は満面の笑みで

「伯父上様。また一緒に夕飯を食べましょうね。」


「もちろんだ茶々!いい子にしてるんだぞ!」


いつもの事だが、何故か気が合う2人。信長も可愛い姪っ子に上機嫌である。


濃姫

「お市、このワイン香りが凄いのよ!」


「義姉上様の選ぶワインに、間違いは無いですよね♡」


信長

「ほお帰蝶、余も一杯もらおうか。」


濃姫お市の2人は実の姉妹の様に女子会トークが炸裂している。

子育ての大変さ、仕事の楽しさ、このトリプルタワーの素晴らしさ等々……

信長はそれを笑顔で眺めていると

『殿、20:30ですよ。そろそろ本題を切り出して下さい。』


『うむ、そうだな分かった』

濃姫からのテレパシーを合図に信長が会話を止めた。


「帰蝶、市、楽しそうで何よりだ。余も安心したぞ!」


「。。。はい、兄上様。長政殿の事ですね。。。。。」


流石は信長の妹"お市の方"である。

何時もの夕食と違う、今日の趣旨を敏感に感じ取っている。


「明朝、横山城を爆撃する。」


「はい。。。。。事前にお知らせ頂き有難う御座います。。。」


「長政に浅井の兵士全員、先々月、既に救いだしておる。横山城のみが破壊されるだけだ!」


「はい?。。。。。。」


みるみる内に"お市の方"の表情が崩れ、涙腺は崩壊。嗚咽と共に涙が溢れ出てきた。


それから信長は濃姫に話した通りの事を、全てお市にも話す。

収納の説明に若干、苦労したが、今何処にいるのか?以外の事を包み隠さず1人の兄として優しく語った。

隣に腰掛けた濃姫も優しくお市の肩を抱いている。


ガタッ!

椅子から立ち上がりフカフカのカーペットの床に正座するお市。


「兄上様、義姉上様、小谷落城後の今日まで、私達3人の母子に並々ならぬ支援と愛情を注いで頂き、感謝の念は尽きません。

そして此度、織田家を裏切り同盟国との会談中の兄上に軍勢を向けた夫・長政。。。

許せる者では無い事!このお市、十分理解しておりまする。

本来であれば切腹どころか磔、打ち首獄門、晒し首にされても。。。文句の1つも言えた義理では無い。。。。。裏切りもの。。。。。。」

そこまで言うと市は泣きながら額を床に押し付けた。


「やめーーい!!!やめぬか!市!!」


言うが早いか一瞬でお市の側に移動、強引に頭を上げさせる。


「何て事をするのだ、お前は余の、いや俺の妹だぞ!妹の土下座なんぞ見たい兄などおらぬ!

さあ椅子に座れ、お前が床にいると帰蝶も床に座りかねん!

そしたら話がやりづらいから俺も床に座るぞ!

お市!おまえこの俺を床に座らせる気か?」


濃姫

「まあ殿、それも見てみたいですわwねえ市w」


お市

「うっうううううぇーん、、うぇーん、うぇーーーん」

床の上で信長と濃姫に支えられ、子供の様に泣きじゃくる"絶世の美女"お市の方。


信長

「おいおい、まるで赤子のようだぞ。。。。。」


濃姫

「まあ失礼なw後で私が叱っておきますからね、お市ちゃん♡」


「うぇーん、、うぇーん、、うぇーん、うっぐ、うぅぅ」


子供の頃から最も信頼していた兄・信長。

その兄を裏切ったのが相思相愛・最愛の夫浅井長政。

その2人が大勢の軍勢を率いて殺し合う戦国の世。


浅井家滅亡後も武将の妻として誇り高く、また潔く、2人の娘を抱えながら兄に守られ濃姫に支えられ、夫の全てを忘れるため必死に生きてきたこの3ヶ月。


それがいま信長と濃姫の心からの愛情に、固く閉ざしていた心の壁が決壊!崩壊したのだった。


やっと泣き止んだお市に、来年の事も含め話をした信長。


「ふん!結局3人で床に座ったままだったではないかw」


「これもたまには宜しいかとw」


「兄上様、義姉上様、市は今やらせて頂いている、産婦人科女医というお役目が大好きです。

人の役にたてる仕事!一生を懸けてやり遂げたい。

これからも続けていく事をお許し願えますでしょうか?」


「勿論よお市!だってここは

なのよ。私が最高責任者!その私からも是非お願いするわ!」


「ふん!好きにせい!帰蝶から聞いたが、市は覚えも早く中々筋が良いそうだ。

織田のいや、この日本国の赤子を全員無事に取りあげてやれ!」


「はい?兄上流石に全員は無理で御座いましてよw」


「そうか?無理か?」


「「「まあ!うふふふふふふ、わはははははは」」」


伊丹トリプルタワー59Fから3人の笑い声が聞こえてきます。


「ではそろそろ余と帰蝶は岐阜に戻る。明朝、信玄の手当てがあるでな。」


「はい今宵は有難うございました。また直ぐ来て下さいね、茶々がお待ちかねですよ兄上様。」


「おおそうだ、茶々にマカロンをねだられておるからな。」


濃姫

「茶々には甘いですからね~」


「ではな、おおそうじゃ長政は修行が明けたら余が名を付けねばならん。もう考えておるぞ。

"南光坊 天海"だ!」


お市

「まあ何やら徳の高そうな、天に海ですか。凄いですね。」


濃姫

「。。。。。マジか。。。」


信長

「ん?帰蝶どうした?まあ良い。では市、明日も元気で働けよ。」


シュン!


こうして信長と濃姫は新岐阜城に戻りました。

にしても大丈夫なんですかね?

"南光坊 天海"って実在した人物なんですが。。。


どうする?作者?

フィクションですから。

m(_ _)m


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