第19話 浅井長政という男
1570年4月1日11:40
横山城会談の間
長政を筆頭に浅井方3人が入室した。
長政
「義兄上、本日は内政について重要なる会談とお聞きしております。前当主及び浅井家臣団全員を、納得させ得る具体的な事を御教授願いたく。」
信長
「義弟よ流石だな。長々とした前置き等下らん!直ぐに本題に入る御主の姿勢、余の家臣等にも見習わせたい!」
「はは、これは義兄上に褒められると何やら居心地が悪うございますなwして1つだけお尋ね申す。
不破殿は存じておりまするが、もうお一方は?」
「ああ失礼、義弟は初めてであったな。余の弟・織田武蔵である。
武蔵、挨拶せい。」
「はい、御方々お初にお目にかかります。織田信秀が四男織田武蔵と申します。
織田家において内政担当の末席にて日々励んでおります。
浅井長政様におかれましては、以後お見知り置きのほど何卒宜しく御願い奉りまする。」
「これはこれは御丁寧な挨拶、こちらこそ宜しく頼みます。」
浅井井演
「誠に失礼とは存じまするが、織田家の御子息で"信"の文字が入らぬ"武蔵"とは?珍しき事で何か理由でもありまするか?」
長政
「これ井演!義兄上の前で控えぬか!"武蔵"殿にも失礼であろう!」
織田武蔵
「いいえ長政様構いませぬ。井演様御指摘の通り、某の母は武蔵国豊島郡墨田の出身にて、海運業を生業とする家に生まれましてございます。
母が16歳のおり祖父が商いで堺へ赴く際に船倉へ隠れ、堺見物を試みたのですが、遠江沖で見つかってしまいました。
商いで尾張津島の大橋家と縁深く、下船させられ預けられている際に父・信秀と懇意になり、情けを頂戴し某を授かったとの事。
先日まで某の出生に関しては兄信長と濃姫様以外、御存知ありません。
不憫に思った濃姫様の御推挙にて今の職に就いた次第でございます。」
信長
「武蔵!その方の生い立ちはもう良い。今日は通商条約の話をしにきた。義弟殿、武蔵の存在はお市すら知らぬ事ゆえ、また場を改め正式に紹介すると致すが宜しいか?」
「はい義兄上、某の家臣が無礼!御詫び致します。」
「。。。。。」
苦虫を噛み潰したような表情で黙り込む浅井井演を横目に見ながら、テレパシーで情報交換する二人。
『帰蝶、中々どうして良き若武者ぶりではないかw』
『まあ殿様。。髪をショートカットとやらにしたのですが、日々の手入れが楽で気に入りましたw
それよりこの井演、浅井久政から殿を討ち取れと命を受け、今にも脇差しを抜く勢い!
安養寺氏種は通商条約に関心は有るものの、やはり力を持ちすぎた織田家は邪魔な存在、特に殿の事を好ましく思っておりませぬ。
肝心の長政殿は。。。父の久政・浅井朝倉家と殿の間で心が揺れ動いています。
切っ掛け1つで牙を剥きますね。
まあ何をしてきても結界付与でかすり傷1つ負いませんが。。』
『。。。。。』
自分と共に天下布武の道を歩むと長政を信じていた信長。
濃姫の鑑定により暴かれた義弟の揺れる心の内。
それを知り落ち込むが気を取り直し語りだす。
「…では始めるか義弟殿。論より証拠と申す、まずはこれを見てくれ。」
傍らに置いていたマジックリュックを開いて長政へ渡す信長。
「ふむ中は空のようですが?」
リュックを覗き込みながも決して手は中に入れない。
さすが戦乱の世を生き抜く北近江戦国大名、用心深さが身に付いている。
「見た目は確かに空だ!少しいいか。」
と長政からリッュクを受け取ると両手を入れた。
次の瞬間、浅井家の3人から驚愕の声が漏れる。
「なっ!!」「おおーー!!」
「これは!!いったい!!」
信長の両手に1斗樽(18L)の八海山が握られていたのだ。
「まだまだあるぞ!」
次は米俵(60kg)を1俵両手で取り出し床に置く。
ドスン!
「「「ぐっ!!。。。」」」
あまりの出来事に言葉を失う面々。
「義弟よ、いや北近江の大名浅井長政殿!この中に入っておる品々の目録をお渡しする。"武蔵"」
「はっ!」
織田武蔵=濃姫から受け取った目録をいまだに驚愕した表情のまま目を通す。
「なんと!!」
*****
【信長から長政への贈答品目録】
米1万石=2万5千俵(150万kg=1,500トン)
清酒1斗樽(18L)×1,000樽
砂糖(上白糖)1kg袋×5万袋
塩1kg袋×5万袋
飲料水1Lペットボトル×10万本
各種品種改良・野菜芋類の種
小松菜・ホウレン草・玉ねぎ・人参・キャベツ・レタス・トマト・スイカ・トウモロコシ・さつま芋・じゃがいも
織田金貨1,000億円
*****
「自ら取り出して見ては如何ですかな?」
信長にそう促され右手を入れようとする長政に
「あいや待たれい!!」
またしても浅井井演が横やりを入れる。
「こんな怪し・物の怪の類い!騙されてはなりませんぞ!
うっかり手をいれて、斬られでもしたらどうするつもりか!」
すると穏やかな美少年の様に美しい顔立ちの"織田武蔵=濃姫"が鋭い目付きで言葉を返す。
「黙らっしゃい!!この無礼者めが!!大名同士ましてや義兄弟の会談において"怪し・物の怪の類い"とか、手をいれたら斬られるとか、そなたは我が
濃姫のド迫力に静まり返る会談の間。。。
「井演!今すぐ立ち去れ!この部屋からでは無い、横山城からだ!
武蔵殿の申す通りである。先程からの御主の物言い無礼千万、浅井家の顔に泥を塗るつもりか!おって沙汰を出す、小谷城下にて謹慎しておれ!」
「殿、お待ちくだされ、それがし。。。」
「くどい!!出ていけ!!」
「ぐぬぅ。。。」
いくら前当主・浅井久政の信任厚い一門衆とは言え、浅井家現当主の長政に叱責され引き下がる井演。
「義兄上、武蔵殿。重ね重ねの無礼!恥ずかしい限りにて誠に申し訳ござりませぬ。」
「浅井長政殿、もう良いではないか。ささっ本題に入りますぞ。」
そこから信長は時間の許す限り長政に語りかけた。
これからの国の在り方、民がいかに大切であるか、その生活を守り保証する義務が我等大名、武家、政に携わる全ての者にあること。
そして民が豊かになれば国全体が豊かになり、教育を施し民度を上げる事こそ国力を上げる事に繋がる。
それを実行するには一刻も早く天下統一を成し遂げ、政策を推し進めるしかない。
このマジックリュックに大量の兵糧武器弾薬を収納すれば、軍が迅速に動ける。
勿論道や橋の普請、一夜城も築ける。戦や内政にどれだけ有効か。
この天の恵みを使い、この国の明るい将来を天下布武の道を歩んで行きたいのだ!!
浅井長政殿どうだろうか、この織田信長と共に歩んで行かぬか。。と語り続けた。。。が最後はどこか遠い目をしている自分がいるのにも気付いた。。。
何故なら鑑定結果を濃姫から聞く前にも関わらず、長政の視線が虚ろになり、眼力が乏しくなっていくのを肌で感じたからだ。
そこまでの事をやる気は無いと目で訴えてくる義弟。。
そこから信長は1度も義弟殿とは呼ばず長政殿と呼んでいた。。。
無意識の内に、やはりこいつとは他人だと本能が呼ばせたのかも知れない。。。
「長政。。。2度目の人生でも。。無理だったのか。。。。。」
ポツリと呟く信長
濃姫
『殿。。。申し訳ございません。。。浅井長政!!浅井朝倉連合軍が到着次第、横山城の防御を固め、殿を討ち取る決心に100%傾きました。。。。。
あまりにも壮大すぎて、己と殿の格差に絶望感が上回ったと出ております。。。
ステータス体力がAからDに激減!!思考力もCからEへ!!逆に攻撃力はBからA+++へ上昇!!!
これはデッドライン!!何を仕出かすか分かりません!!』
1570年4月1日 12:40
『ブーーーブーーーヒューヒューヒューヒュー!!!』
まさにこの時!!
神力を持つ信長・濃姫と信長創造のAndroid全員に、ステルス偵察ドローンから緊急テレパシーが入る!
『浅井朝倉連合軍・姉川を渡り速度を上げました!浅井家先鋒・磯野員昌騎馬軍団3千"1250ヒトニーゴーマル"横山城着陣します。
第2陣一門衆・浅井政澄5百火縄銃部隊
第3陣長政実弟・浅井政之5百火縄銃部隊
"1255ヒトニーゴーゴー着陣"
その直ぐ後ろに第4陣重臣・遠藤直経1千弓部隊"1300ヒトサンマルマル"着陣
続いて第5陣庶流の浅井惟安1千槍部隊"1305ヒトサンマルゴー"
さらに同時刻、後続2千の足軽部隊が雪崩れ込む戦法!!
繰り返すヒトニーゴーマル敵騎馬軍団3千着陣!!』
「ここまでだ帰蝶!!」
突然立ち上がった信長が不破光治と濃姫を収納!!
転移で横山城門前に出てまだ城内にいるAndroid護衛兵士7人も収納する。
「殿!!突然!!何事!!」
厳しい目で城門を監視していた稲葉一鉄が目敏く信長を見つける。
「一鉄!!!浅井と手切れとなった!!!門前から500m後退!!!」
「はっ!!!総員後退!!!」
ダダダダダダダダダダ!!
稲葉軍騎馬軍団3千が土煙を上げ後退していく。
シュン!!
信長は横山城をぐるりと取り囲むように周囲の土を収納!
幅50m深さ100mの空堀を創造する!
『尚輝!!吉備神社前のAPC9マシンガン部隊8千!!横山城門前に移動!!空堀で周囲を囲んだ!!城から出ることも連合軍と合流する事も出来ぬ!!大至急稲葉の騎馬隊3千に合流!!敵先鋒に備えるのだ!!』
『ラジャー!!城門前まで距離1,300m!!90秒で着陣!!』
またも浅井長政に裏切られた織田信長。
収納から出た"織田武蔵"の姿のままで濃姫は、悲しそうな表情で防御の空堀を見つめる夫の背中をそっと撫でるのでした。。。
ーーーーーーーーーーーー
う~ん。。。浅井長政
長政とお市の方との間に生まれたお江(三女)。
二代将軍徳川秀忠に嫁ぎ、徳川三代将軍家光の生母です。
長政は将軍のおじいちゃん(外祖父)なんですね。
但しお江(三女)は1573年生まれなので、今現在(1570年)存在しません。
因みにこの物語では諸説(1566年・1567年・1569年)ある茶々(長女)の生年を1567年説を採用しています。
"金ケ崎の退き口"さえ無くなれば
その後の織田浅井連合軍。
朝倉とは適当に付き合いながら畿内をもっと早く固め、毛利攻め四国攻略も2年は早く着手出来たかも?
そうなれば本能寺の変も起きなかった?
と思って描き始めた物語なんですが。。。
父親浅井久政と長政の微妙な関係性とか、越前が織田の手に落ちた時、このまま信長に使い潰されるのではと疑心暗鬼になる気持ちも出たかも知れません。
織田家との同盟は無理があったのか?どうなんですかねぇ。。。何とも。。。
さて2章が始まりました。
私はテンポ重視で1話5,000文字を超えないように書いてます。
サクサク書ける時は気が付くと 9,000超えとか(汗)
不自然にならないよう接続部分を書き直して2話に分割したり。
(18話と、この19話がそうでしたw)
逆に浮かんでこない時は苦しみながらまだ2,800かよ。。。とか。
史実通りの事をなぞるだけでも大変なのに、フィクションですからねぇ。斜め上の発想を持ってこないと。。。中々コンスタントにいかないものです。
次回は姉川の戦い、小谷城、一乗谷に加賀一向衆はどう動くか?
越後の虎もまだ生きてますから。
また応援★★★宜しくお願いします。
m(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます