第9話 伊丹城攻略と徳川家康

 1570年1月8日 岐阜城



 帰蝶のチート回復で肺結核を完治してもらった竹中半兵衛。

 命の恩人に己の一生をかけて恩返しすると誓い、信長の直臣になった。


 その事を皆に周知徹底させるのと伊丹城攻略の件で、急遽主だった家臣を岐阜城に集める。


「半兵衛、御主の才覚を見込んで申し付ける事がある。

 余の直臣としての初仕事だが、帰蝶行政大臣の元でトイレを普及させてもらいたい。

 なぜ商人の真似事を命じるのかと不満かも知れぬが、これには重要な戦略が隠されてもいる。

 帰蝶行政大臣、基本戦略の意味を説明してくれ。」


「はい殿畏まりました。

 半兵衛殿、トイレの普及は美濃に住まう民衆達の衛生面に劇的改善をもたらします。

 これが成功すれば不衛生から来る民の病等も防げるのです。

 童の死亡率も減り人口増加に拍車がかかる事になります。

 噂を流し体験させれば、他国から織田家領地に流れ込んで来る者も増えるでしょう。

 人は国の宝。

 人口が増えるということは戦わずして相手を弱らせ、脅威を感じさせるに十分な戦略だと思いませんか?」


 まさに目から鱗が落ちるとはこの事。

 濃姫の言葉が決め手となり、

 尾張担当を織田長益が美濃を竹中半兵衛が担うのである。


 一方でイージスミサイルや重機関銃、攻撃用無人ドローン機で武装した強力無比な安土城。

 常駐守備兵士に織田信長直轄軍3,000(攻撃型Android)を無料で貸し与える破格の条件。

 何よりも城の名称が自分の名字で命名されることが、武士の誇り誉れであり、織田家に対して生涯の忠誠心を呼び起こす。


 宇佐山=森城(城主・森可成)

 関ケ原=稲葉城(城主・稲葉一鉄)

 安土砦=前田城(城主・前田利家)

 京都=村井城(城主・村井貞勝)

 堺=柴田城(城主・柴田勝家)


「今回はこの5ヵ所である。いずれも畿内を押さえる重要な軍事行政拠点。

 城主に任命された5家の者達は益々励んでくれ。

 今後織田家は"天下布武"の道を突き進む。

 これからも重要拠点は必要である。

 武田への牽制に東美濃。

 徳川との速やかな連携のため三河との国境にも築城する。」


「「「おお~~!」」」


 今回城持ちになった五人以外の重臣や有力家臣達。

 次こそは自分の番だと目の色を変えている。


「池田恒興!前へ」


「はっ!」


 信長の乳兄弟でもある池田恒興。

 東美濃の城主に指名されるのではと内心ほくそ笑む。


「此度、将軍足利義昭公と余の間が不仲では無いか?と勘繰った伊丹城・伊丹親興と手切れとなった。

 余が摂津三守護に命じた恩も忘れ、朝倉・延暦寺・石山本願寺・それに武田信玄等と密書を交わし織田包囲網に加担する動きを見せている。」


「なんと!!恥知らずな真似を!!」


「良い。恒興そなたに伊丹城攻略の大将を命じる。

 明日にでも出陣出来るよう武器弾薬、兵糧等の軍需物資手配は済んでおる。

 余の直轄軍15,000の指揮を任せるゆえ見事、伊丹親興の首を挙げてこい!」


「はっ!!この池田恒興。

 必ずや伊丹親興の首級を御館様の御前に掲げて見せまする。」


「よう言うた!軍勢は明朝、岐阜城前に3,000を揃えておく。

 残りは関ケ原の稲葉城に12,000を向かわせた。

 今日この場に一鉄が居らぬのも、軍勢出迎えの為だ。

 馬と護衛を用意しておる。すぐに屋敷に向かい支度を整え

 明朝出立致せ!」


「はっ!ではこれにて御免!」



 織田信長公もう伊丹城を取るつもりの様です。

 荒木村重が信長の命で伊丹攻略をしたのは1574年ですから3年も早く毛利攻めの拠点が出来るって事になるのか…史実の逸脱が止まらない。


 **********


 その頃、曳馬城(後の浜松城)の徳川家康


「全く…突然10人の護衛だけで現れて竹千代家康久しいのおとは…相変わらずあのお方は…」


 徳川家筆頭家老・酒井忠次


「確かに昨夜、少人数での訪問には驚きましたなあ。しかし曳馬城の拡張工事の間、18,000もの守備兵士(攻撃型Android)を貸してくれるとは武田勢への牽制には十分な戦力です。」


「ああ、昨年 遠江とおとうみ国の分割統治協定を一方的に破った信玄とは交戦状態。

 今のワシでは三河・遠江でどうかき集めても10,000がやっとだ。

 ここ曳馬城の拡張工事が完成し浜松城と改名する間だけでも18,000の大軍は大いに助かる。」


「駿河の東側では北条氏康殿も信玄に目を光らせております。

 天竜川の西にあたる浜松に織田勢18,000が駐屯すれば、いかに武田でも三河・遠江においそれと兵は向けられませぬ。」


「うむ。じゃがのお忠次、相手はあの大うつけ殿じゃ。

 この大きな借り、今度は何を申し付けられるか…考えたくもないのお。」


「はい殿、それ故考えない事としましょう。今は浜松城拡張に全力を尽くしますぞ。」


「あいわかった。ワシはなるべく早く本格的に浜松城へ移り、岡崎城は信康に任せるぞ。」


「御意!」


 遠江で家康に加勢をし恩を売る。それは1570年の武田信玄の動きを限定する事に繋がる。

 史実と違う信長の落ち着いた戦略はまた、より狡猾にもなり織田包囲網をズタズタに引き裂く日が着々と近づいている。


 **********


 再び岐阜城、信長の寝室


「殿、伊丹親興の件は大丈夫なのですか?」


「早急過ぎると思うておるのであろう?実はな一昨日将軍に【殿中御掟】追加の1を叩き付けて来た。」


「はい?史実では昨年の16ヶ条に追加するのは5で今月23のはずですが?」


「ああ、伊丹親興に敵対行動を取らせるために早めに出したのだ。特に厳しくしてな読んでみろ。」


 濃姫が目を通す。


【天下の政治は信長に任せられたのだから、日本国においての軍事行動及び経済・流通・農業・漁業等、通商業務の取り決めや等も織田信長が全てに行う。

 将軍の上意を得る必要は無い。

 領地1つ持たない将軍は織田信長のである。

 もしこれに不服であれば信長が金銭を出し建立した二条城を即刻立ち退く事!

 さもなくば攻め落とす。】


「これは……などとハッキリ言いましたね。

 宣戦布告と同じ文書ですよw」


「元よりそのつもりだ。恒興が伊丹城に着陣する頃には伊丹親興、余への反旗を翻してるだろうよ。」


「史実より狡猾になられましたね。」


「1日も早く天下統一しなければ後の世でアメリカ・イギリス・ソ連に食い物にされ、中国の台頭を許してしまう。

 外交の場で"誠に遺憾である"くらいしか言えなくなるのだぞ。

 そうなると独立国家としては、もうお手上げだ。」


「殿この帰蝶、軍事的にこれからの織田軍のお役に立てるかと思い試した事がございます。」


「ほお?はて帰蝶にはショッピングモールにて安土城の図面。

 それ以外にも武器弾薬、兵糧等で既に軍事的役割は大いに役立っておるが?」


「はい、それに重ねて防御力もチートにしたく。昨日、結界付与を試して見ました。」



「なんと!!チート結界の付与と申すか?」


「はい。殿お気に入りの迷彩色軍服や軍靴ブーツ、侍女の着物等に付与した結果、刀・槍・弓矢どころかM9マシンガンの弾丸ですら弾き返しました。」


「な、なんだと……」


「驚くのはまだ早いですよ殿w鑑定結果を見てみると、チート結界付与の効果は100年だそうです。」


「……100…ねん…」


「しかも仮に何かしら欠損が出ても自動修復機能が働き、瞬時に新品に戻るとの事。

 つまり人が生きてる間は永遠ですねw」


「…………帰蝶…お前こそ…神いや女神だ…」


 **********


『う~ん殿がこんなに感激するなんて。

 チート回復予防付与が薬だけじゃなく、飲食物にも成功したことの報告は今度にしとこう。

 だって何度もほめられたいもの♡


 白米は確かに美味しいけど栄養素ビタミン類(特にビタミンB群とビタミンE)が足りないのよね。

 玄米には豊富に入ってるのに精米段階でそれを削ぎ落としてるから。

 田んぼにチート回復付与を行使すると、精米しても栄養素が残るなんて…

 しかもビタミンAにビタミンD。

 タンパク質とカルシウムまで付与できるって…

 お米好きな日本人は無敵の身体作りが可能ってことよね。

 ほんと私だってびっくりしたわ。

 田植えの時に話してまたほめてもらいましょ♡』


 ーーーーーーーーーーーー


 信長も凄いけど濃姫のチートは女神レベルですね。

 もうこの二人だけで織田家は天下統一できるかと………

 

 **********


 冒険者ランクSSSタイセー・ヨミウリ人外記

完結しました。

 どうぞ宜しくお願いします。

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