第7話 安土城"宇佐山支店"完成

 1570年1月3日11時


 比叡山延暦寺から京都へ入るのに、どうしても通らなければならない宇佐山。

 北国街道と琵琶湖を押さえるに適した軍事・通商等交通の要衝。

 琵琶湖を一望できる標高336mの山頂に、信長の命で森可成が先月から築城を始めたばかりの山城です。


 そこに護衛のAndroid兵士100体を引き連れ転移で降り立つ織田信長。


「励んでおるな可成w」


 突然作業員詰所に現れた主人の姿に戸惑う可成。


「御館様!!はっ!!何処からどうやって??」


「ふっな事だ気にするな。者共荷を降ろせ。」


 そう言うと前もってAndroid兵に引かせるをした大荷駄を開け、瞬時に収納から荷を取り入れる。


「おおーーーーー」

「わあああああーーー」


 可成や各作業責任者、足軽達からは歓喜の声が。


 美濃吉"和風おせち三段重を500セット

 業務用特大寸胴10個には具沢山豚汁

 海苔付き特大鮭お握り2000個

 清酒八海山1斗樽(18リットル)50樽

 フルーツタルトケーキ500ホール

 ロールケーキ500本

 コシヒカリ1俵(60kg)100俵


「余からの御年玉だ。可成!少し早いが皆で昼飯を食せ。」


「ひる?飯ですか?」


 戦国時代の日本ではまだ朝昼夜3食の習慣はなく、食事は朝と夜の2食、昼は小腹が空くと果物や瓜等を適当に食す程度であった。(戦中は別です。4~6食たべたそうです。)


「そうだ今回の築城は緊急を擁すために、年末年始返上でお主等は働いておる。

 それに報いようとが用意した馳走を持参した、遠慮なくやってくれ。」


「なんと!濃姫様が!」

「おお~濃姫様が~」

「ありがたや~濃姫様」


「ふっ畏まってないで皆の者!さあ食べるぞ、正月だ飲酒も許す!」


「「「おおーーーーー」」」


 森可成を筆頭に城の縄張りや運搬用道路普請で作業中の500人。

 思いがけない信長の登場。しかも料理に酒まで持参している。

 盛り上がらない訳が無い。


「この重箱の料理、綺麗すぎて食べるのが勿体ない。」

「ほお食わぬならワシが貰うが」

「斬られたいのか?」

「大殿の面前で止めんか馬鹿ども。それより濃姫様の用意された御馳走、有り難くいただこう。」

「う、うまーーーい」

「こんな美味い飯!生まれて初めて食べたぞ!」

「この豚汁とやら身体中に染み渡る…」

「それならば、この濁りの無い澄み酒よ」

「まさに五臓六腑に染み渡るのお!」

「濃姫様のためならワシは命を懸ける」

「おれもだ!!」

「こらお前ら、それを言うなら大殿様だろ!」

「あっ!!す、すみませんでしたーー」


「ふっ、ふっはははははは構わん正月だ無礼講よ!それに帰蝶も喜ぶであろう、なあ可成!」


 笑いながらも目の奥が鋭く光っている信長。


「うっ!配下の者共が無礼な物言い、この可成なんと申し上げればよいか…誠に失礼致しました。」


 必死に頭を下げる可成。


「なに気にするな、それとな

 これは余から可成への詫びでもある。」


「詫びですか?」


「実は護衛として今日連れてきた100人だが伴天連の者達でな。

 7年前に備前国でルイス・フロイスを通じ、土木建築に不思議な力を使う一族郎党を引取り匿っていたのだ。」


「7年も前から…伴天連の不思議な力で御座いますか?」


「伴天連や南蛮人ではないぞ、あくまでの者達だ。それゆえ顔も言葉も我等と何ら変わらない。」


「はあ…それで何故殿が詫びねばならないのでしょうかな?」


「この宇佐山は織田家にとっての重要拠点。

 それはこれから益々重きを増す。

 それゆえ御主に築城を命じたのだが、ここにきて朝倉義景を始め延暦寺や石山本願寺等に不穏な動きがある。」


「それは畿内の安寧を乱す事になりまするな。」


「ああ。それ等だけならまだ対処もできるが、昨夜"影の者"達から厄介な報せが入った。」


「三好三人衆の残党ですか?」


 首を横にふりながら信長は


「武田晴信が息子の勝頼等を率い元旦早々、駿河焼津にある花沢城を攻めておる。」


「なっ!武田ですか!!」


「ああ信玄坊主め、花沢を落とせば海が手に入る。

 奴の狙いは悲願である武田水軍の編成。

 そうなると家康の遠江を陸と海の両方から攻めるのが可能だ。

 もし余が信玄であれば、同時に配下の秋山虎繁を使い東美濃から三河も狙う。」


「……殿そうなると我等織田も…」


「ああ早急に家康との軍議に入る、そこでだ可成。」


「はっ、何なりとお申し付け下さりませ。」


「畿内と朝倉の"たわけ"共は武田と共闘し織田包囲網を敷いてくる。

 そうなると京に入るためこの宇佐山を真っ先に攻めてくるだろう。

 今日中に城を完成させる必要がある。」


「…………仰っておる意味が分かりませぬ……」


「無理もない…余も始めは信じられなかった。

 論より証拠だ、しばし記憶が飛ぶが容赦せい。」


『シュン!』


 森可成を筆頭に信長の無礼講許す発言で、大騒ぎ宴会中の森家一族郎党達をまとめて収納する。


「宇佐山築城の材料として土砂、木材、城壁用の石垣も麓に集めておったな。」


 それも全て収納すると宇佐山山頂が一瞬で更地になる。

 基礎を埋込むため更に大量の土砂を収納すると、300m四方(9ha)に深さ50mの大穴が開く。


「史実の安土城より大きめに作ったからこれで良いだろう。」


『ドーン』


 外観五重で内部は地上六階地下1階。


 幅・深さ50mの外濠そとぼりを掘り、収納に入れてある大量の琵琶湖の水を注ぎ込む。


 防衛兵器として


 短距離(射程100km)イージスミサイル1000本。


 ブローニングM2重機関銃(有効射程2km)1000丁


 攻撃型無人ドローン機レーザー光線弾(飛行範囲10km)1000機


 それ等を備えるまさに難攻不落どころか、近づく事さえ不可能な城。


 その安土城"宇佐山支店"大手門前の土砂を収納し、チート創造術で綺麗に手入れされた芝生を植える。

 すると横に300m縦200m四方(6ha)の芝生の絨毯で出来た大手門広場を作成する。


「ふむ中々見事な緑の広場だ。」


 1人悦に入る信長の後ろには

 常駐守備兵士の攻撃型Android 1,000体が整列。

(残り2,000は早朝から京都、坂本、大津、浅井家小谷城下、堺等で比叡山延暦寺に今宵"戌の刻"天罰が下ると噂を流しまくってる。)


「そこの広場に全員出すか。」


『シュン!』


 森可成の一族郎党や人足を勤める民衆500人を収納から取り出した。


「わははははは、その時の奴の顔が…な…ん?」

「この城が完成すれば…森家も…大殿から信頼……完成してる?…はぁ…どこだ?ここ?」

「あれは?なんだ!!…城か?」

「外濠が掘られてる……その水はどこから……」

「大殿の後ろにいるのは?敵か?」

「ひいーーー城が城が出来てるーーどういう事だーー」


 先程までの殺風景な築城中工事現場から、一瞬で美しい緑の芝生絨毯が敷き詰められた広場に戸惑っている面々。

 しかも安土城と1,000体のAndroid軍勢にも気付き、腰が抜けている者も多数いる。


「……殿……思考が追い付きませぬ……」


「論より証拠と言うたであろうw」


 可成の驚愕する表情に対して、イタズラが成功した悪ガキの様な笑みを浮かべる信長。


 どれ!と立ち上がりよく通る声で演説をする。


「皆の者よーく聞けい!この城の名は安土城"宇佐山支店"だ!!」


「あづち?」「してん?」



「ここは琵琶湖や北国街道から京へ入るための入口!

 すなわち織田家にとっての重要拠点である。」


「おおーそうだった…」

「それで宇佐山城を築城すると聞いてたんだが…」

「なぜか…もう出来てる…」



「森可成!前へ出でよ!」


「はっ!」


 信長に指名され恭しく控える可成


「本日1月3日よりこの安土城"宇佐山支店"の城代に任ずる。

 森家の拠点そして織田家全体の要の地として大いに励め!」


「は、ははぁーーありがたき幸せ。

 この森可成ならびに森一族郎党、命に懸けて安土城"宇佐山支店"を守り抜きます所存!」


「可成よう申した!正式名称は今後も安土城"宇佐山支店"である。

 だが長すぎる故"森城"と名乗る事を許す!以降余も森城と呼ぶ良いな!!」


「あっ!……もり…城…某の家名が…」


 完全なる封建制度が確率しているこの時代において、家臣の名字が城の名称になる事は絶対に有り得ない。

 あまりの名誉に言葉を失う可成。


「どうした可成。

 余の命名した"森城"では不服か。」


「あっ!いえ!申し訳御座いません。

 あまりの事に驚愕しておりました。

 森城!死んでも守り抜きまする。」


「いや死ぬなよw余が困るわいw」


「は、はあーーーーー」


「但し天守閣の最上階に余の部屋を1室設ける。

 そこは余と帰蝶以外、例え余の嫡男信忠でも許可無く入る事はまかりならん。しかと申し付ける。」


「はっ!森家一族郎党総員で殿と濃姫様の"逢い引き部屋"を守り抜きまする!」


 全員跪きお任せあれと真剣な表情だw


『逢い引き部屋って…こいつ大真面目に語っておるわ…まったくw』


「よい…それともう一つ大事な事を伝えておく。今宵戌の刻(20時前後)比叡山延暦寺に天罰が下る。

 光輝いた岩や土砂瓦礫などが天上から降り注ぐそうだ!

 日頃から修行もせずに僧侶とは思えぬ悪行の報いである!

 皆の者!しっかりその目で見届けるが良い。」


「はっ!天罰…ですか…」


「細かい事は今宵己の目で見ればわかる。

 さて可成、余はこれから安土砦に赴き森城と同等の城を建ててくる。

 戌の刻前に帰蝶を連れて戻るゆえ、御主と息子達も最上階にて延暦寺への天罰見届けようではないか。」


「それはなりませぬ。"逢い引き部屋"に我々が入るなどバチが当たります!」


「……そうか…あい分かった…それとそこに控える1,000人の兵士。

 余が直々に鍛えた強者揃いだ。

 森城の手勢としてそちに預ける。夕刻にはもう2,000連れくる。

 それらの扶持は兵糧から飲み水に至るまで、全て余が持つゆえ構わずとも良い。

 住居は宇佐山の麓に"高層マンション"なる物を建てて置くゆえ気にするな。」


「3,000もの守備兵をお貸し頂けるのですか!!」


「ああ森城内部や武器弾薬の場所、使い方等すべて理解しておる。

 慣れるまでみな戸惑うであろう、余の直轄軍兵士に聞くとよい。では頼んだぞ可成!」


 そう言い残し信長は城の中に入って行きました。

 しばらくして可成達も城内を探しますが誰1人信長を見つける事は叶いませんでした。


「幼き頃より神がかっておったが、本当に神の使いではあるまいか?」


 織田家随一槍の使い手猛将"森可成"にして、奇跡をもたらす信長に畏怖を感じ、変わらぬ忠誠を誓うのでした。


 ーーーーーーーーーー


【織田信長の作る新たな封建制度】


 土地を仲介として結ばれた主従関係に基づく支配制度。

 日本の場合朝廷が直轄領以外の土地を諸侯に領有統治させ、税を納めさせていた。


 しかし戦国時代に入る前から、実際にその地を治める守護職が税等を横領し力を蓄えていく。

 戦乱の世に入ると戦国大名としてその土地に君臨、そうなるともう京の都とは名ばかり。

 朝廷や公家公卿も経済的に困窮し

 室町幕府に至っては領地も資金もなく、自前の軍勢も養えず権威にすがるのみ。


 ギフトで未来知識を得た信長は改革の一環として、織田家臣に土地の領有を認めず、給金として金子で支払う事を推し進めるつもりである。


 その一方で武士のプライドを守るため、森城のように城代に据えた家臣の家名を城の名称にする策等を実行する。


 守備兵として攻撃型Android3,000体を常駐させる。

 これの扶持は住居兵糧含めすべて信長が負担する。

 資金もかけずに強力な戦力増強となり家臣は喜ぶ。

 がしかしそれはあくまでも織田信長直轄軍であるため、いざ戦争になれば信長のAndroid兵士は従わない。


 主力の軍勢が動かなければ謀反の可能性が著しく減ると同時に、それを知らない家臣達はAndroid兵士を自らの腹心として迎え入れる。

 その動きや不平不満等を監視される体制が確立していくのである。


 但しあらゆる未来の便利な生活用品や、飲食料品、濃姫のチート回復による治療等で、織田家臣から不平不満が出る事はほとんど皆無となっていく。


 これでも本能寺の変に匹敵する謀叛が起きるのか?

 今のところ筆者すら知らない

 m(_ _)m


 **********


 冒険者ランクSSSタイセー・ヨミウリ人外記


 完結しました。

 どうぞ宜しくお願いします。

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