唄い髑髏
第1話
こんにちは、泉名探偵事務所で助手をしています虎元と申します。
探偵事務所といってもごく小規模の、個人経営に毛が生えたようなものでして、日々を食い繋いでいくだけで精一杯、そんな事務所でございます。
本日は、とある女性からの相談がきっかけとなった不思議な事件についてお話しようと思います。
***
虎元はこの日珍しく午後から出勤だった。前の日、珍しく遅くまで仕事をしていた上に、少し前に出張から戻ってすぐだったこともあり、疲れからか派手に寝坊したのだ。
まあどうせ、誰も訪れる人はいないのだから、店が空いていようといなかろうと変わりはしないだろう、そう思っていた。
事務所は既に空いていた。いつもは適当にしか事務所に来ない泉名が今日に限って早く来ていたようだ。
虎元は入り口のドアを開ける、と同時にドアベルの音が鳴った。
相談者のために用意したソファーから誰かが振り向いた。
安野という男だった。
振り向くや否や、ああ、遅い出勤ですね──と言った。
安野はオカルト雑誌「実録オカルト蒐集記」の編集長であり、自他共に認めるオカルトマニアであった。
如何わしい話ならどんなことでも首を突っ込みたがる性格であり、それこそ、地球外生命体やら幽霊やら、陰謀論やら、噂が立てば我先にと話を聞きにいくような、野次馬としての熱量、行動力は抜きん出ているものだった。
そういう意味では、今の仕事は天職とも言える。
一方の泉名といえば、本人ははっきりとは言わないが、これまた如何わしい話がめっぽう好きらしく、安野とも定期的に情報交換するような間柄であった。
趣味が合うといえば聞こえはいいが、まともな人なら眉をひそめるような話題を延々と話している。正直、あまり褒められるような間柄ではなかった。
どうやら、泉名にここを訪れる約束をしていたようだ。
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