第7話
さて、ここまでが佐和田さんの身に起きた奇妙な体験のお話です。
最後に、佐和田さんの後輩に当たる方から聞いたお話を紹介しておきましょう。
「ああ、相間さんと佐和田さんですか。確かに去年まで一緒に働いていました。
新人の頃からお世話になってたんですが、二人とも会社を辞められて。
相間さんが亡くなられたと知ったときはショックでしたよ。退職する前から体調が悪かったのはわかりましたが。まさかあんな亡くなり方をするなんて…
え、ああそうですよね。私も報道されてる以上のことは知らないですが。G山の湧水の出る池に首を突っ込んで亡くなってたんですよね。
池の辺りで正座して、そのまま前屈みして。ちょうど岩から湧水を飲もうとするようなポーズで。多臓器不全って言ってたので事件性はないとのことですけど。
でも池の水を飲もうとしてたところで突然臓器が満足に動かなくなって亡くなる、なんてあるんですかねえ。詳しいことはわかんないですけど。
ああ、佐和田さんですね。私たちも今どこにいるのか分からないんですよ。
辞めた時の状況ですか?そうですね…あんな人なんで仕事一筋で、それ自体は悪いことじゃないんですが、それに加えて、過去に取材した先のことに熱心に調べるようになっちゃって。ご家族とも上手くいってなかったみたいです。
結局離婚されたみたいなんですけど、なんだかそれで一気に憔悴しちゃって。
ある日突然、退職するって電話があって、もうそれっきり出社することはなかったんです。
それから暫くして、ビデオカメラがウチの会社に届けられました。
佐和田さんは会社の資産であるカメラを持ったまま辞めていました。辞めてから暫くして気づいたのですが、その時は既に連絡もつかない状態で。
その佐和田さんが所有していたカメラが落とし物として拾得されまして。会社の備品ですから、ケースやら本体に社の名前が貼ってあったので、ウチに戻ってきたみたいです。
そこにですね、佐和田さんが撮影した映像が入っていました。私にはこれが何か分からないのですが…とにかく気持ち悪いものではありました。
ちょっと見てもらえますか」
そう言ってビデオカメラの映像を再生した。
緩やかな斜面に石碑のようなものが映っていた。夜のようだった。辺りは暗く、カメラの灯りだけで辛うじて石碑がみえる程度だ。
虫の鳴き声と草木が擦れる音だけが聞こえている。
暫く同じ映像が続く──。
そのうち──石碑の一部に暗い靄のようなものが浮かび上がった。
靄は少しずつ石碑の周囲に広がる。
じわじわと石碑に靄がこびりつく。
不気味な映像だった。
その瞬間──
「うおおおおお!やったぞ!ついにやったぞ!」
佐和田さんが歓喜の叫び声を上げた。カメラに佐和田が映る。
「どうだ!やっぱりあっただろう!これだよ。ほら、ほら!」
カメラに向かって興奮した様子でこちらに叫んでいる。
そうして映像は終わっていた。
「あの、この映像だけなんですけど。これは一体なんだったのでしょうか」
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