第4話

 ランキングで紹介できそうなネタを稼ぐため、取れ高が欲しかったのは事実であった。

 そこで二人は高台の反対側に周り、更に続いてく山道を進むことにした。


 一時間ほど緩やかな坂道を登っていくと岩肌が剥き出しの、小さな峠が見えてきた。


 「なんか寂しいとこっすね、これ、こっからまだ長いんですかね」


 峠道はこの先も延々と続いているように見える。

 岩が組み合わさって出来たような地形で、草木もあまり生えていない、なんとも殺風景な場所だった。

 ふと前を歩いていた相間が振り返った。

 その時──相間が何かに気づいた。


 「あれ、人じゃないっすか?」

 「ん?どこだよ…ああ、確かに」

 来た道の上方、切り立った崖となっている視線の遠くに黒い人影が見えた。

 「声かけてみます?」

 「ん、いや、、なんか変じゃねえ?あいつ微動だにしないぞ」


 黒い影は何をする訳でもなくその場に立っている。こちらに正面を向けているようにも見える。そう考えると怖くなってきた。


 「またヤベえ奴かな…この山変なやつ多いんじゃねえか」


 「どうしますか?近くに行って確かめるったってあんな崖の上じゃどうやって行ったらいいか」

 「ほっとけ。とにかく、先を急ごう」


***


 そこからさらに進むと苔むした岩に囲まれた、静かで侘しさが漂う山道に差し掛かった。

 静寂の隙間を縫って、どこからか水の音が聞こえる。

 「この辺っぽいですね、あ!あそこに建物がある」


 そこは岩肌から流れでる湧水を受けるように窪みを作ったような石が置かれていた。途中出会ったハイキング客が言っていたのがこれだろう。

 隣には小さな社が鎮座している。無人ではあるだろうが比較的綺麗に整備されていそうな神社だった。


 「ああ、確かに静かだし涼しい。水の落ちる音だけが聞こえる。これはいいな」

 湧水を飲み休憩することにした。ここまでの疲れを忘れられるようだった。

 「あ、すいません俺ちょっとトイレ行ってきます」

 「おい、こんなところにトイレなんてないだろ」

 「いやあ、ですよねぇ。まあ、その辺でささっと行ってきますから」

 「ったく、さっさと戻ってこいよな」

 「すんません」

 そう言うと相間が席を立った。

 一人になると、より静かさが際立った。

 佐和田は一人、ぼーっとしながら家族のことや、仕事のことを考えていた。


 家を空けることの多い佐和田だったが、いつまでこの仕事を続けられるのだろうか。

 家族にも迷惑をかけていることは承知だった。

 仕事は確かに楽しいが、本当にこのままでいいのだろうか。

 最近そんな事を考えることが増えた。


 そうこうしているうちに相間がトイレから戻ってきた。

 「よし、さっさと絵撮っちまうぞ」

 佐和田が機敏に立ち上がる。相間がカメラを構えると──


 ジジ、ジジジジ、、、


 「あれ、、またカメラの調子悪いな」

 二人は気づいていなかったが奇妙なノイズと共に、遠くに黒い人影が浮かんでいた。

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