夢幻の千夜譚・異界来訪之洞窟
むかしむかし、此の海辺の村には「異界来訪之洞窟」と称せられる洞窟ありき。
此の洞窟は、干潮の夜、ふとした瞬間に其の入口を開き、異なる世界より来る客人を迎え入れると云ひ傳へられたり。
洞窟の奧深くより現れ出でし其の客人たちは、見知らぬ衣装と怪しき道具を携へ、村人には悉く理解不能なる言葉を操ることも多かりきと云ふ。
然れども、彼らの多くは村に対し親しき態度を示し、争ふことを好まざるとされし。
村の古老たちは、異界よりの客人現るる度ごとに、村の若者たちへ「驚くこと勿れ。先づは温かく迎へよ」と諭し伝えたり。
客人たちは、何ぞ大なる目的を持ちて来るには非ず、漂ふがごとく此の地に辿り着きし者ばかりなりといふ。
異界よりの来訪、果たして如何なる条件に依りて起こるや、今以て定かならざるもの也。
古き記録には、異界の来訪者が村に諸々の智恵や技術を齎したりと記さるることあり。
されども、訪れし者の殆どは洞窟を後にして再び戻ることなく、村を離るるに至りけり。
かくて、干潮の夜が来たる度に、村人たちは密かに胸に一抹の期待と不安を抱きつつ、此の洞窟が再び新たなる異界の客人を迎え入れる日を待ち侘びてゐると云ふ。
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