夢幻の千夜譚
蓋(けだ)し、遠き昔より伝へられし奇譚・怪異・神秘の物語を一書に収めたる稀有なる文書に御座候(ござそうろう)。
斯(か)くまで数多の奇談を載せ、読み人を異境の夢路へと誘ふ(いざなう)もの、実にまことにも稀なる事に候。
遥かなる天地、幽邃(ゆうすい)なる森や幽冥(ゆうめい)の闇に息づく妖異の姿、或(ある)ひは天空を裂き翔ぶ風鳥の伝説、王宮に隠れ棲む不思議の者ども――此れらの物語、今や頁(ぺいじ)と成りて在(あ)り候。
此の「夢幻の千夜譚」に記されし数多の事柄は、古の世を知る古老の口伝を基とし、年月を経て伝へられしものにて候。
理(ことわり)に従ひ畏(おそ)るべき力を有す妖精、夜空に冴え渡る光の花、或ひは隠れ里に棲む異形の者たち――いかなる奇事、或ひは怪しき事象も、實(じつ)をもつてありとすれば、斯くまでの語り草に成り申すは道理かと存じ奉(たてまつ)り候。
本書を手に取る者よ、其の頁を繙(ひもと)けば、幾千夜の夢幻の行路が現れ候ふ。
万感の心を以て一頁ごとを心に留め、斯の異界の響きを心ゆくまで感ずるがよろしき候。遥かなる昔の夢の如き光景を、魂に深く宿し給へ。
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