第36話

ない…?とは?



「ちょっと失礼。」


「えっ?!」



 冷静な彼が私の手首を掴み、そのまま腕を上にあげる恰好をさせられる。



「ちょっ」



 どこをどう隠せばいいのか、やっぱりすぐにタオルを拾っておくべきだった。



 私の脇の下をじっと見つめる冷静な彼。



 なんというか、ちょっと気味が悪い。



「…脇の下まで生えてない。」


「脱毛サロンか?!」


「…いや、毛根自体が、ない。」



 その一言で、今度は皆の視線が私の頭に集まる。



「髪の毛はあるのになあ…。」



 関西弁の彼の一言で、冷静な彼が今度は私の髪をかき上げ、頭の地肌をじっと観察する。



 いやだ。さすがに、いやだ…。



 こんな増毛診断に来たおじさんのような扱いをされるの…。



 私はスっとしゃがみタオルを取ると、すぐに身体の前を隠した。



 そんな動きをする私には気にも留めず、冷静な彼は、私の髪の毛根と脇の下に夢中。



 身体の前を隠しても意味はなかった。



 なぜ、なぜその場所なのか···。



 恥ずかしすぎて顔が火照る、というよりも熱くて火を噴きそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る