第33話

カーテンの外からは、また口々に話し声が聞こえてきた。



「とばりぃッ!なに言っとんねん!推しとリアルを一緒にすな!!そいでもって死ぬな!!」


「そうだぞ、愛を語るのはまだお前には早い!」




「ちがうんだよそーじゃないんだよ。いやそうだけど、だって、タオル一枚だよ?履いてませんよ?壮大な物語を展開させないと俺の自制心がララバイしちゃいそうだったんだよ!!」



 帷さんの悲痛な叫びに静まり返る。




「それにこの風呂のシャンプーは無味無臭のはずなのにあの子めちゃめちゃいい匂いすんだよ!俺と同じシャンプー使って同じ香りがすると思ったら大間違い!信じられないくらいいい匂いすんだよ!!」



「······ここの風呂を使うのは帷だけじゃないけどね。」


「その理屈でいくとここにいるメンバー全員同じ匂いをまとわせていることになるな。」



「それに見れない見れない顔以外見れない。あの子の裸見たら俺多分死ぬ!!」



 死なれては困ります。



 私はどのタイミングで出ていけばいいのか。



 でもさっきの壮大な牧場物語を聞く限り、帷さんが悪い人だとはとても思えない。



 それに、私のことを知っている。


 彼は『あの柿』の山元織羽のことを知っている。

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