第30話
こんな身体、査定するようなものでもないのに、とシャワー室にある全身鏡で自分の身体を見つめた。
「帷~、お前さぁ~なんなん?!皆を誤魔化せないようなことすんなや。」
「そうだぞ、突拍子無さすぎて対応に困る。まあ突拍子無いのはいつものことだが。」
「てかいくら推しに似てるからって庇うことないのに。帷があんなことするなんてめずらし。」
「おいおい竜彦だってちゃっかりバイクの後ろに乗せてたよな?」
「竜馬だってジャンケン参加してたよね?」
カーテンの向こうからは口々に話す声が聞こえてくる。
このシャワー室は帷さんと他の4名、いわゆる最高幹部しか入れないVIPルームに併設しているらしい。冷静な彼がそう言っていた。
つまり今ここで私が出ていけば、一瞬で裸を見られるということになるのだ。
…さっき大勢いた時よりも緊張するのはなぜだろう。
とりあえず髪の毛を拭いて、タオルを身体に巻く。
ここでもたもたしていたって、きっと勝手にカーテンを開けられるだけだ。
緊張するのは裸を見られるということだけではない。もし査定で皆のお眼鏡にかなわなければ、私は捨てられるのだ。
きっと、一突きで殺されるのとはわけが違う。殴って殴って、徐々に弱るのを楽しむかのように、生殺しの状態で捨てられるのだろう。
覚悟はできているはず。
生唾を呑み込んでから、大きく深呼吸をする。
自分の頬を軽く叩いてから、アコーディオンカーテンをゆっくりと開けた―――――
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