第28話

皆の視線はさっきまで私に集中していたはずなのに。


 

 私の見せ場を、帷さんがかっさらって行ってしまった―――。



 軽くショックで。



 …負けられない。


 負けられないっ私っ!!



 私のおいしい場面のはずだったのに。。そりゃあ、この流星界のトップに立つ程の器なのだから目立つのも無理はないと思う。



 でも、私だってやる時はやれる子のはずなのだから…!



 だから、織羽、いきます!脱ぎます!



 もうためらいもなく勢いよくスカートを床に落とした――――。





「NOoぉぉぉぉぉおおおターッックル!!!!」

「きゃあッ」



 私が下着を見せたところで、一瞬にして帷さんに下からタックルされて


そのまま後ろに押し倒されてしまった。




『ブラジルの人ーーーー今日は楽しい通話をありがとーーーー!!9割くらい何言ってるか分かんなかったけどそっちのサンバもサッカーもアミーゴもちょーかんどーしたーーー!!』


「きゃああぁ」



 私のお腹に顔をつけて叫ぶ帷さん。いや、これはお腹というよりもおへそだ。恥ずかしすぎて思わず手で顔を覆う。



 さっきはゴミ箱で、今は私のおへそで通話をしているらしい。



 でも脚からお腹にぎゅっとまとわりついて、まるで私の下着を隠してくれているようで。



 もしかして、助けてくれた…?




「ハアハア、ヤバい…温かい!推しの肌が生温かいよハアハア生きてる、生きてるーーー!!!ヘヘヘヘへそがイイ匂いだしへそにゴマなんてもんもないしなんなら美味そうな匂いプンプンしやがるしハアハアハアハア生きてるんだハアハアハアッ」



 …なんて、なんて忙しい人。



「ダメよジョニー!!だめだよ"待て"だよ?舐めちゃだめだよ食べちゃダメだよ、待てだよ待て待て待て待てハアハアハアッ」



 しばらく喉を詰まらせながら「ハアハア」していて、少し落ち着いたところで、突然帷さんが着ていたパーカーを脱いだ。



 そして私の下半身にパーカーを掛けると、上半身裸のまま振り返って言った。



「解散。」


「……」



 その言葉に、全員無反応で。



 納得できないというよりも、誰も理解が追いついていない様子だ。


 

 言うなれば、場が凍りついている状態。



 でも次の帷さんの一言が、皆を自動的に動かした。




「散れっつてんだよ糞共が。」

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