第26話

「…今日はうちのトップの調子が良くないらしい。」



 そう言った冷静な彼が、嫌悪を表す様な顔で私を見る。



「よし、とにかくお前、今すぐここで脱げ。」



 ……え?…なに。



「聞こえなかったのか?脱げと言ったんだ。」



 彼は確実に私を見据えていて、まさかと思うもやっぱり私に向けて言っているようだ。



「ぬ、ぬぐって…」


「脱がなければ査定も何もお前の価値が図れない。モニカの代わりで来たんだろう?なら少なくともあの女以上の身体でなければ敵も誘惑できない。」


「……ゆうわくって…」


「金目当てで来たんだろ?それなら私たちの言う事には従え。」



 自分を"私"という彼に違和感を覚えつつも、自分の置かれた状況に半信半疑のまま。


 

 金目当てって…というか、敵を誘惑…?


 罰は私が思っていたよりも複雑なものらしい。いや、もしかすると罰ではないのかもしれない。


 竜馬さんが"ヒメ"だと言っていたことが関係あるのかもしれない。



「……ぬぐって、…ここで?」


「当たり前だろう。」


「……」



 今になって身代わりになってしまった現実味が帯びてきた――――。



 そうだ、罰であれヒメであれ、私はここで"好き勝手に犯される"のだろうし、"叩かれる"のだ。



 それがこの流星界という集団の掟。帷さんの独裁主義国家だ。



 周りが『早くしろ』と威圧的に訴えかけてくるのが分かる。



 さっきの関西弁の彼も、竜彦さんも竜馬さんも。菊地さんは…大きな巣で寝ているけれど。



 冷静な彼は眉間にしわを寄せ嫌そうな顔をしているけれども。帷さんは、相変わらずまばたきをしないけれども。



 工場の冷たいコンクリートをハイソックス越しに感じた。

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