第25話

ふうと息をつき、ゴミ箱を抱えてこちらに戻ってきた帷さん。



 相当な労力を使ったかのように、首の関節をコキコキと鳴らし、再びソファに座った。



 …でも周りの目は、真剣そのもので。



 その静寂を断ち切ったのは、あご髭の生えた関西弁の男性、ウノで帷さんに怒っていた彼だった。



「よっしゃ、皆よう聞き!」



 皆が彼に集中する。



「今帷は、ゴミ箱を糸電話代わりにブラジルの人と通話しとってん!」



 しーん



「「地球の裏側におるブラジルの人お元気ですかー!」ってな!」



 ふん、と鼻を鳴らす関西弁の彼。


 ……



「以上、俺から皆に向けてのフォローとアドバイスでしたー。」



 周りがぱらぱらと拍手をし始めて、私もこの波に乗り遅れてはいけないと慌てて拍手をした。





「……ツッコミ待ちかどうかは知らないが、さっさとこの女の査定を始めるぞ、帷。」



 一人だけ拍手をしていない、さっき静かに本を読んでいた彼が淡々と言った。この状況でも彼は冷静そのものだ。



 でも帷さんは再び私をじーーーーーっと見つめるばかりで動く気配がない。そしてゴミ箱は大事そうにしっかりと抱えたままだ。

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