第24話

「······おい、帷?」



 向こうで静かに本を読んでいた、ベージュのサラサラヘアに、斜めに切り揃えられた前髪の男性が立ち上がった。




「ふっ·····ダニエルはせっかちさんだな~。」


「は?」


「ちょい待ち、」



 帷さんが組んでいた足をおろし、立ち上がると、ソファの隣に置いてあった筒型のゴミ箱を取った。



 今度は私から帷さんへと視線を移すメンバー。



 そのまま工場内の奥の方へと消えていった帷さん。



 そして、ゴミ箱の中に顔を入れて




叫んだ――――






『めっちゃヤバいやつやん!!来たやん!!去年の七夕に推しに会えますよーに祈って祈って短冊563枚書いてあちこちの木にくくりつけて去年のクリスマスにサンタさんに741枚手紙書いて投函したらめっちゃモノホン来てまったやん!!どーすんのよコレ!!!!』





 ――――一瞬にして工場内が静まり返る。





『でもちょい待とうよ俺!焦るな早まるなそして色あせるな!!もしかしたら推しになりすました"なりすまし詐欺"かもしれないじゃん!!ATMで振込する時しつこいぐらいに"振込め詐欺じゃないですか?身内の方に確認しましたか?"って画面バンバン出てくるじゃん!!昼休みで後ろめっちゃ並んでんのに全然振込みできんくてめっちゃ気まずくなるやつじゃん!!でも確認は大事だよ?!一つ一つチェック項目つくって皆で照らし合わせて確認しよーよ?!ねえそーしよ?!!』




 一体、何が起こっているのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る