第10話

その「ア"ぁ~~~~」が何を意味しているのかは分からない。


 

 だって菊地さんは無表情だし、何より鳥なのだから。



 ただそれだけ呟いて離れていってしまった菊地さん。光の中へと戻って行く姿に、ほうっと見とれてしまう自分がいた。



 後ろにいた女性がゆっくりと立ち上がって、少し震えの落ち着いた手でまた私の腕をつかんだ。



「…あ、あんた、すごいね…。」


「え?」


「あの菊地に楯突くなんて…すごいよ。」



 …そうなの?


 すごいの…?



 人の基準はいつだって不透明だ。



 でも今度もし動物園に行って"はしびろこう"に出会ったら、一緒に写真を撮ろうと思う。



 "はしびろこう"…。なんだか少し、かっこいいかも。いや、もしかすると、菊地さんがかっこいいのかもしれない。



 はしびろこうに気を取られていたせいか、それ以外のメンバーの状況を今になって把握した。



 前3台のバイクの後ろには、少なくとも10台以上のバイクが並んでいる。



 たかが女性一人にこんな複数の人数で追いかけてくるなんて…彼らは一体何者なのだろうか。



「…まさか、菊地を手懐けるとは。」



 停めたバイクのエンジン音直後に聞こえてきた声。



 真ん中にいた人物が、ヘルメットを取りながら私に近付いて来る。

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