第3話

道路と歩道の境目も分からない道を、ゆっくりと進んでいく。



 そんなに遅い時間なのか、車が1台も走っていないし、人の気配もない。



「痛、」



 そういえばと足元を見れば、靴を履いていないことに気がついた。



 かろうじて履いていたハイソックスに、ゴツゴツとした地面が食い込んでくるような感触だ。



 痛いけれど、このままここでじっとしているのは寒いから、ただ歩いた。



 遠間隔に並ぶ街頭でさえも仄暗く、歩いても歩いても、シャッターが閉められたお店か、民家とも分からない廃屋のような家を通り過ぎるばかり。



 何時間歩いただろうか。




 微かな人の息の音が聞こえてきた。



 後ろからか前からか、必死に息継ぎをするような呼吸音が近付いて来る。



「はぁ、はぁはぁッ」



 すぐに何か慌てているのだと察知できた。相当乱れた呼吸音だ。



「だれかっ…!はぁはぁ、だれか、たすけてッ!!」



 前から乱れた服装と、結んだ髪が今にもほどけそうな姿で走ってくる女性が見える。



 こんな真っ暗な夜にも関わらず、ミニスカートに肩の出たニットを着て、私みたいに裸足で駆けてくる女性。



 目を凝らせば、ストッキングはどうやらところどころ破れているらしい。



 私も慌てて彼女の元へと走った。

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