第10話
「惟、お前も俺の娘のようなもんだが、颯はな、実は俺の本当の孫なんだよ。」
「.....えっ?」
つい一月程前の話。
惟は稲沢に呼ばれ、稲沢と颯の真実を聞かされた。
「俺の
「........」
「颯には俺や息子のようには生きて欲しくねえ。....いつか真っ当な世界で生きていって欲しいんだよ。」
実の祖父の想いとして正論だった。
しかし颯がここからいなくなれば自分はどうなってしまうのだろう。
不安しかない────死にたい。
でもそれ以上に、颯の行く末を確かめたい────
だからせめて、一緒にいられる時間は私を抱いて、愛して欲しいのに.....偽りでも何でも構わない。
それでも颯には"決まり"を守ることの方が大事なのだろう。いつも愛撫のみで抱き寄せて愛してはくれない。
彼は私の背中に恋しているのだから。『散り桜』を
私は『散り桜』の足元にも及ばない。
『散り桜』によって生かされていて、しかも『散り桜』がなければ颯との時間は過ごせなかった。
あんなに呪いたかった父に感謝しなければ、私はこの先生きていけない───。
稲沢の部屋を出て、護衛に連れられ廊下を歩いている最中、惟は何度も奥歯を噛み締め涙を殺した。
◊
ある日、颯が惟の部屋まで洗濯物を持って来た時のことだった。
部屋の中から惟と
「皐さんは、私のこと可愛いって思う?」
「そりゃもちろん。可愛いくて手のかかる妹のように思ってますよ?」
皐が惟の部屋にいるのは珍しいことで、しかしそれより2人の距離が近いことに動揺を隠せない颯。
組の若頭を背負っている皐が家にいること自体少ない。いつの間にそんなに仲が深まったのか.....。
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