第5話
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「バッカじゃないの颯!あんなんにいちいち頭下げることないのに!」
「····仕事ですから。神堂家は世界有数の名家ですし親族の方にもぜひ融資頂きたいので。」
「ムリムリ!もう神堂家とは絶縁したも同然だって!!」
誰もいなくなった広間で、襦袢姿の惟が大の字で寝転んだ。
天井には360°、どの位置にいても睨み付けてくる白い豹が描かれている。牙を向きギョロ目を剥き出し、仰向けであくびをする惟をじっと睨んでいる。
「····せめて私の背中にもあの子みたいなカッコいい豹を彫ってほしかったのに。なんで父さんは『散り桜』なんか彫ったんだろ···。」
「桜が舞う時期に産まれたからだと吟鳴先生は言ってました。」
「私だってそんなん耳ダコよ。···普通"散る"刺青なんて彫らないでしょ?しかも私、女の子なのに。」
未だ正座を崩さない颯がさらりと返す。
「その女の子が堂々と胸を見せるなど言語道断です。俺にとって死活問題になりかねません。俺に謝るなと言いながら謝らなければならない状況を作るだなんて、とんだ女の子ですね。」
「ああ、つまり颯は、じゃじゃ馬娘が暴れてる様子を『散り桜』で表現してるって言いたいのね?」
「そうではありません。···むやみに胸を晒すなと言っているのです。」
その言葉で上体を起こした惟が、白豹の如く、颯をギロリと睨んだ。
「はあ?私の背中を散々見せもんにしておきながら今更何言ってんの??」
「.........」
「背中は金取って見せるのに胸は駄目ってどんな理屈よ?じゃあ私の胸に『散り桜』が彫られてたらあんたは背中は見せるなって怒るの?!ふざけんじゃないわよ!」
「......すみません。」
「何でも謝って済むと思ったら大間違いよ。罰として私を気持ちよくしなさい。」
「......ここで、ですか?」
「そうよ、ここで、よ。」
颯が立ち上がり、足を投げ出す惟の横に腰を下ろす。わざと襦袢の隙間から見せる惟の太ももを、颯の冷えた手が触れていく。
颯の骨ばった指が惟の中心に触れると、そのまま下着の中へと滑らせた。
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