第50話
「反物屋と洋裁屋がいっしょくたになってる上に、男用、女用もいっしょくたになってるね。」
「惣菜屋には山菜や農作物はあるけど、肉類魚類はやっぱり少ないね。」
なんだか商売業に精通する評論家に評価してもらっているみたいだ。
「もっと人も品物も増えるといいんだけどね。国から移住しちゃった人も多いみたいだし、財政難の王都を繁栄させるってなかなか難しいわよね。」
智彗様は身長を担保にしてまでこの王を繁栄させようと私を呼んだのに、これでは、わざわざ派遣したに値しない成果だ。深い溜息をつく私に、双子が顔を見合わせて言った。
「でも昔見た時はもっとずっと酷かった。店もあるのかないのかわからない状態だったし。」
「それに"知の聖地"を作ろうと呼びかけたのは、瀬里さんだと宮廷の人から聞いた。」
2人を見上げると、2つの手が自分の頭にそっと置かれた。
「俺たちと友好を結んだから大丈夫。」
「うん、茂倫さんがこの王都で商売を始めることを考えている、なんて口が裂けても言えないけどね。」
···おかしいな。聞きたくもない幻聴が聞こえる。というか、それって茂倫さん、ここを乗っ取ろうとしてるってことですか?!
「それ他言無用って言われたじゃん」と冴霧さんに向かってツッコミを入れる祥雲さん。私に包み隠そうという気はさらさらないらしい。
「ちょっと?!え??何それ!どういうこと?!」
「そんなことよりも、この国の世継ぎはどうなったの?」
「そうだよ、凌一族が途絶えそうだって話はどうなったの??」
「え?何その話···?」
いい具合に話を反らされ、私もまんまと乗せられてしまう。
「有名な話だよ。この国の皇帝は嫁を迎える気がないって専らの噂だよ?」
「うん、だから皆凌一族が途絶えると思って、領地を乗っ取ろうと目論むんだよ。さっさと嫁を取って世継ぎを作ればいいのに。」
そ、そうだったの?!智彗様って嫁を取る気がないの??!
もしかして、書物ばかりに気を取られて女性に興味がなくなったとか。いや、一族が途絶えるかどうかの話なのに、そんな理由で嫁を取らないなんてことがあるのだろうか。
もしかして、養子を迎える気なのかな。
因みに銀縁の武器生成術の書は、貸し出し期限が2週間であることを双子に伝えた。
2週間貸し出した後は、一旦こちらに戻してもらい、不備や補修箇所がないかのチェックをしてまた改めて2週間貸すことになった。
「めんどくさいなあ」という双子に、「うちの"大事"な"禁書"ですから」と返しておいた。
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