8.ゆるふわ策士って何ですか

第49話

淇帒国と友好関係を結び、2週間が経った。




 智彗様と瑞凪様は、初めて見る亜怜音大陸の書物に興奮しっぱなしだった。



「こ、こここれが、亜怜音大陸の書!!す、凄いですっ表紙がっ!なんだか見たことのない素材を使ってますよこれ!!」


「···ほ、本当だ。こんなに手になじむ書物は、生まれて初めてだ!」



 半ば大袈裟にリアクションをする2人に、荷馬車で書物を運んできてくれた祥雲さんと冴霧さんが、その素材を教えてくれた。



「この書物は皮を使っているんだって。」

「動物の皮を加工して表紙に貼っているんだって。」



 と言いながら、智彗様の頬をプニっと両側からつつく双子。



 そういえばうちの図書館の洋書も、この素材のものがけっこうある。アンティーク調で見た目が西洋風のオシャレな表紙だ。



「そういえば、この国には動物の毛皮があるって言ってたよね?書庫にある破れかけの和装本を修理して、皮の表紙をつけるってのもいいかもね。」


「···なるほど。」

「あ!面白いですねそれ!」



 本は当然劣化していくものなので、定期的に補修をしていかなければならない。特に和装本は、ゆくゆくはハードカバーのように保存性のいいものにしていくのがベストだ。



「そうそう、俺たちこの国の王都を見学したいんだ。」

「そうそう、茂倫さんに偵察してこいって言われたんだ。」



 祥雲さんと冴霧さんが堂々と偵察発言をするが、この国の王都を見てどうするのか。村や山間部から移り住む人は増えてきたとはいえ、淇帒国の王都には当然敵わないだろう。



 すでに亜怜音大陸の書物に夢中な智彗様と瑞凪様に代わり、双子は私が案内することとなった。




 「これが、王都の現状。」

 「思っていたよりも店はあるね。」



 荷馬車は宮廷の広間に置いたまま、歩いて王都まで来ると、双子が興味津々にお店を物色し始めた。

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