第46話
「こんなに海産物が獲れるなんて凄いなあ。この海産物がこの国にも入ってきたら皆喜ぶだろうな。」
「そうでしょそうでしょ。うちの近海で獲れる海産物はどれも高級食材ばかりですからね。」
「···ところで、そちらが望むものはできる限り手配する、と言っていましたけど、もし友好関係が結べたら、最初に提示して頂いたこの海産物や塩も、別大陸の書物と一緒に運んでいただけるんですよね?」
自分でも嫌な女だなと思いながらも、笑みを絶やさず言ってやった。木々を無断で伐採した罪は、まだ裁かれていないのだから。
茂倫さんの細目が薄っすら開くと、顔は笑っているのに目が笑っていないような、違和感のある表情になった。
それを見た私は思わず武者震いしてしまい、背筋に悪寒が走るような感覚を覚えた。
さすがに皇族でもない年下の小娘に付け込まれてムカついたのだろうか。
自分で吹っかけておいて勝手に怯んで、そんな自分が情けなくなった。勇者だからといって、対等に敵う相手だと思ったら大間違いだ。
でも隣に座る智彗様が、私の左手の甲にそっと手を重ね、安心させるように落ち着かせてくれた。
自分でもよくわからないけれど、なんだか目の奥が熱くなってしまった。
「彼女の言う通りです。定期的に海産物や塩も手に入れば民も喜びます。皇帝陛下も前向きに、武器生成術の書を貸すことを検討してくれるはずです!」
弁明してくれる智彗様。
ずっとゆるふわなだけの皇帝だと思っていたが、私のことを安心させてくれる、頼もしい存在であることを今になって認識してしまった。
智彗様は、優しくて頼りがいのある素敵な皇帝陛下だ。
「なんだ、まだ友好関係が結べたわけじゃないんだ。」
ポツリと祥雲さんが漏らすと、茂倫さんがようやく細目の顔に戻り、「いやいやバレたか☆」と冗談ぽく笑った。
淇帒国一行を見送った後、私と瑞凪様は宮廷前の広間で智彗様に問い詰めた。
「兄さん、どうするんだ····。」
「ほんとだよ!!禁書をあんないけ好かないヤツに貸すなんて大丈夫なの?!!」
慌てる私たち2人に「あはは」と口を開けて笑う智彗様。
「実は、武器の生成術の書というのは、1冊だけではないんですよ。」
「····え?」
「武器の生成術だけで50冊はあるんです。」
「とりあえず見た方が早いので」という智彗様の後をついていき、隠し部屋にあるという禁書を見せてもらうことになった。
今日は淇帒国との話し合いのため、民の書庫への出入りは禁止にしており、昼休憩とあってか書庫内で作業していた人たちもちょうど出払っていた。
書庫の床にあるという隠し部屋の扉は、一見床と同調していてわからないが、よく見ると木目の溝が濃くなっている部分がある。
書棚を動かし、瑞凪様がある木目の板をスライドさせると、扉を持ち上げるための穴が現れた。そこに手を入れ、扉を開くと床下に空間があり、階段が続いている。
でも下に下りてみると、部屋というよりも床下収納のような狭さだった。
そして案の定、そこには乱雑に置かれた禁書の山が。
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