第45話
「しかしですね、辞典を作るとなると相当な年月を要しますよ?すぐにはお渡しできるものではありません。」
「はい、承知の上です。」
「ふむ。」と隣に座る冴霧さんと顔を見合わせる茂倫さん。
茂倫さんなら禁書を手に入れるために作りかねない。
私は本当に禁書を貸してしまってもいいのかと不安になり、智彗様を見るもニッコリと笑顔で返された。
それを見て、何か裏があるのではと悟った私。
「ですが、やはり武器生成術の書はそれ以上に大事なものになります。なんせ"禁書"ですから。」
「つまり、粋凪様たちは別大陸の書物を望んでいるということですよね?それなら、南洲と亜怜音の書物を定期的にこちらに運ぶというのはどうでしょう?!」
「···そうですね。そちらの意向はわかりました。皇帝陛下にも相談した上で決断させて頂きますね。」
すると部屋の扉を叩く音がし、祥雲さんが「昼餉を持って来たよ」と入ってきた。
従者たちもワゴンのようなものを引きながら部屋に次々と入ってきて、机の上に海産物を使った大皿料理を綺麗に並べていく。
「わあ!!すごい!!アワビに、これってウニ?!伊勢海老まである!!」
「え?これは
私が高級食材に目を光らせていると、祥雲さんが指を差しながら教えてくれた。この世界に来て、ずっと質素な食事ばかりだったから嬉しくてたまらない!
さすがの智彗様も瑞凪様も、豪華料理を目の前に目をパチパチとさせている。芳逗パーティーの時とは大違いだ。
「で?茂倫さん、友好関係は上手く結べた?」
昼食を食べながら、祥雲さんが茂倫さんに話合いの内容を聞き出している。きっと茂倫さんは、この豪華な昼食で海産物をアピールし、武器生成術の書と引き換えにやり取りをするつもりだったのだろう。
「いやいや、勿論。」
当たり前のようにそう話す茂倫さん。いやいや、結べたかどうかはまだわからないでしょう!
それにしてもさすが、商売慣れしている国の宰相だ。全く怯む様子がない。
そこで図々しい私がすかさず、茂倫さんのアピール材料を話題に持ち出してみる。
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