第42話

でも茂倫さんに気を取られるあまり、すぐには気付かなかったが、馬車の影に入る2人の役人は、なんと2人とも同じ顔をしたイケメンだった!


 髪は白く、長い前髪からは片目だけが覗き、赤い目をしている。なんともミステリアスな雰囲気だ。



「右目が出てるのが祥雲ショウウン、左目が出てるのが冴霧サギリ。2人は双子で、僕の補佐をしてくれてるんですよ!」



 茂倫さんが紹介すると、双子は軽く頭を下げた。


 智彗様が「粋凪」を演じると、双子はじっと智彗様を見た後、智彗様の頬をプニっと両側からつついた。



 ···え?何してるのこの人たち···?



「ここにこんな可愛いものがいるなんて知らなかった。」

「瑞凪様に弟なんていた?年離れすぎじゃない?ほんとに弟?」



 智彗様は冷や汗を流しながらも、必死に作り笑いをしてごまかしている。



「いやあ弟さんがいるなんて僕も知りませんでしたよ~。もしかして実は瑞凪様の子供だったりして、なんて。ははっ☆」



 茂倫さんが軽く言うも、瑞凪様はもうすでにどっと疲れた顔をしていた。




 6人で話し合いの部屋に入るなり、茂倫さんが、「そういえば」と思い出したように呟く。



「そろそろ昼餉ひるげの時間ですよね。今日僕ら、海で獲れた新鮮な魚や貝類を持ってきたんです。ここの料理長さんにお願いして、皆さんの昼餉を作って頂いても構いませんか?」



 瑞凪様が智彗様と目配せをし、確認を取る。



「···それはそちらの食材を頂けるということですか?」


「勿論です!挨拶代わりに持って来ただけですから気にしないでください!」



 作るのはこっちの料理長なのに、あたかも自分たちが全面的に恩を売るような言い方、気に食わないな。



 茂倫さんが「祥雲」と一言名前を呼ぶと、祥雲さんが頷き部屋から出て行った。恐らく料理長のところに食材を持って行くのだろう。


 私の心の内を知ってなのか、席に座るなり、茂倫さんがすぐに私に話しかけてきた。



「いやいや、この国の宰相様が女性だったなんて驚きです☆今日はどうぞお手柔らかに頼みますよ瀬里様!」


「···そうですね、なるべく口は挟まないよう気を付けますね茂倫さん。」



 自分のイラ立ちを見せないよう、なるべくにこやかな笑顔で返しておいた。同じように、にこやかな笑顔で返してくる茂倫さん。水面下での戦いはすでに始まっている。

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