第36話
まだ書庫の本が全て綺麗に並べられたわけじゃないが、知識を求める人が増えてきたため、書庫の隣の部屋を、急遽読書スペースとして開設することになった。
「もっと皆が気軽に利用できる空間にしたいわよね。できれば宮廷内を通らずに、外から入って来れるような感じで。」
「それは離宮のような"離れ"みたいな感じですか?」
「ああ、離宮···うん、"離宮の図書館"ってなんか素敵かも!」
私のその一言で、書庫とその隣の部屋の周りを取り壊し、離宮のような造りにすることになった。
「···でも兄さん、禁書はどうする?今までは、私たちしか書庫に入れなかったからいいが、今後はそうはいかない。」
「ああ、そうでしたね。」
そういえば、禁書である"派遣術の書"は皇族しか使えない術書だって言ってたっけ。
「ところで禁書って普段はどこにあるの?書庫では見かけなかったけど。」
智彗様と瑞凪様が顔を見合わせ、真剣な表情で、お互い了解を得たように頷いた。
「瀬里には特別に教えますが、誰にも内緒ですよ?」
可愛く人差し指を口元に立てる智彗様にキュンとしてしまい、眉を下げながら首をブンブンと縦に振る私。
「実は禁書は今、書庫の隠し部屋にあるんですよ。」
「え?!か、隠し部屋??!」
あの乱雑に本が積まれていただけの書庫に、隠し部屋??大事にしているのかいないのか、もう私にはよくわからない。
聞くところによれば、実は書庫の床に隠し部屋があるらしく、そこに禁書が隠されているらしい。
「その禁書っていうのは何冊あるの?」
「この宮廷にある禁書は120冊ですよ。」
「ええー!!!そんなにあるの?!!」
私の驚いた声に驚いた智彗様。「びっくししました!」と目を丸くしている。
禁書は全て金縁がついた真っ赤な表紙で、いわゆるこの世界の"魔法"のようなものらしい。
禁書は、何かを生成したり、人や物を瞬間的に移動させたり、はたまた消したり、嵐のような風や大火、洪水などの災害も起こせる、元は戦に利用されていた"術"の手引書。
ただし禁書というからには理由があって、それらの術を使うには、術を必要とする主の"身体の一部"の犠牲が伴うとのこと。
私を派遣した時にも智彗様の背丈(年齢)が削られた。派遣だから担保として扱われるが、他の術はそうはいかないらしく、そのまま片足や両目を失うこともあるのだとか。おー怖い怖い。
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