第34話
宮廷に戻り、そんな姑息な売り込みをした話をすれば、智彗様が「あはは」と笑ってくれた。
「瀬里は本当に凄い、やはりこの国の勇者様ですね!交渉での魯源さんの言葉を盗むだけでなく、新たな切り口で売り込むなんて!」
正々堂々戦う勇者ではないが、財政難を救うためなら多少の手段も致し方ない。
「瀬里は人との会話から知識を盗み、私は書物から知識を盗む。きっと2人一緒なら、この先この国も安泰ですね。」
何気なく嬉しそうに話す智彗様だが、この先って一体いつまでのことを言っているのか。
···私そのうち帰るんですけど?
本の整理の方は、地味だが着々と進んでいて、書庫のジャンル分けにようやく終わりがみえてきた。
次にはジャンル分けした本を、タイトル順に並べるという苦行が待っている。
できれば検索システムのような、"配架目録"まで作りたいというのが私の希望だが、この世界の文字が書けない私には、到底無理かもしれない。(だから誰かにやらせたい)
智彗様から許可をもらい、山脈から切ってきた樹木で棚を作る作業と、いらなくなった宮廷の屋根の鉄鋼でブックエンドを作る作業にも取りかかり始めた。
景郷国の兵士たちが。
その代わり、3食宿泊付で。もちろん宮廷の部屋を使ってもらっている。
因みに今、修繕作業の様子を見に、わざわざ俊恵さんがまた来訪しているのだが、なぜか宮廷の侍女をナンパしていた。
今日も色気を放つ俊恵さんと困りながら頬を染める侍女さんに、私がげんなりした顔をしていると、「おっと瀬里、嫉妬かい?」と訳のわからないことを言ってきた。
「俊恵さん!ナンパしてる暇あったら書物並べるの手伝って下さい!」
瑞凪様は、「···いや、絶対邪魔になる」と呟いたが、これも"知の聖地"の立派なPRになると思い、私は無理矢理俊恵さんを書庫に案内した。
「へえ!さすがに驚いたよ。この国に、こんなに沢山の書物があったとはね。」
私は簡単に、どんなジャンルの本があるかを俊恵さんに説明した。戦術に関するものは少ないものの、生活に関わる実用書や指南書の数は計り知れない。
あ、それと万能薬の宣伝も忘れずに。
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