第29話
「とてもありがたい申し出なのですが、我が国は北からの
「···た、卓越風?」
「ええ、北から南へと吹き荒れる卓越風のせいで、剱東溟は風邪など体調を崩しやすい国とも言われているのです。」
困った笑顔を向けながらも、「植物や生物も少ない国なんです」と教えてくれた魯源さん。私の世界のモンスーンみたいなものだろうか?
「体調を崩しやすいなら尚更、自国で薬草を栽培した方がいいと思います。確か薬草の屋内栽培の文献があったと思うので持ってきますね!」
「え?!い、いやしかし、」
「ちょっっ!!」
魯源さんと私が止める間もなく、部屋を出て行ってしまった智彗様。
私が頭を抱えていると、不良騎士が「子供のお守りも大変だな、宰相さんよ」と口角を上げながら話しかけてきた。悪いけどあんたに言われたくない。
智彗様が書庫に本を取りに行ってる間、魯源さんが瑞凪様に弁解する。
「そんな栽培方法まで教えてもらうつもりはありません!もし薬草の輸送が難しいのであれば、宇汾さんの万能薬を輸送して頂けるだけでも構いませんから。」
魯源さんが交渉相手で良かった。志成さんとは正反対の人間だ。
「···それより、景郷国と友好関係を結んだらしいな。この国に戦力はなさそうなのに大丈夫かよ?」
目の前に座る洹牙さんが、机に肩肘をつき、チラリと私を見やる。
真正面に座る不良騎士に、初めて視線を這わせると、彼の頬や首筋、手の甲には古傷が沢山残っている。これでも騎士団長というのだから不思議でならない。
「友好関係といっても外れの領地を貸すだけで、戦力を貸すわけじゃないから大丈夫よ。」
突然タメ口になった私に、顔をしかめる洹牙さん。例え団長であっても、彼には何となく敬語は使いたくない。
「景郷国の敵は西絽だけじゃない、西絽と同盟関係を結んでる国だって沢山あるんだ。こんな小国、攻め入られたら一発で終わりだぜ?」
さっきから彼は何が言いたいのか。うちが景郷国と友好関係を結んだことが不満なのだろうか?
「もし薬草を輸送、いや栽培方法教えてくれるってんなら、うちの兵士を常駐させてやってもいい。」
「は?」
「てかお前さっきから急に態度でかくねえ?!」
洹牙さんをぎりぎりキレさせる寸前で戻って来た智彗様。ナイスタイミングだ。
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