第28話
「早い話が、この原料となる薬草を、我が国に輸送して頂きたいのです。」
輸送···?ってどうやって??馬とか?馬車とか?
「勿論馬車の手配はこちらで致しますし、薬草の対価も支払わせて頂きます。」
「···いや、薬草を輸送というのはなかなか例を見ないものだと思いますが、万能薬自体を輸送するのでは駄目なのでしょうか?」
確かに。村の自然に生えている草を、二国を通り過ぎてまで輸送って、草が枯れて効能がなくなるんじゃないの?
「できればその薬草を使用して、万能薬だけでなく、滋養剤や怪我の塗り薬なんかも作りたいというのが本音でして。
うちはご存じの通り、隣の景郷国とは互いに戦力を貸す同盟国となっています。が、いつ借り出され怪我を負うかわからない兵士たちのために、薬剤の種類を豊富に揃えておきたいと思っているのです。」
「······」
無言になってしまった瑞凪様。無理もないと思う。だって薬草で万能薬やそれ以上の薬を作られたら、宇汾さんの万能薬が他国に売れなくなっちゃうかもしれない。
すると智彗様が、「あ、あの」とまごつきながらも手を挙げた。
「薬草を輸送となると、鉢のようなものに収めなければならないと思うのですが、それでも何日か輸送期間がかかれば、当然鮮度も落ちるかと、」
「おいおい、たかが草で渋ってんのか皇帝の弟さんよぉ?」
足を組み智彗様を睨みつける洹牙さん。もう彼はこの世界の不良騎士といっても過言ではない。
ちょっとイラっときた私は、思わず口が出そうになってしまったが、智彗様が慌てて言った。
「いえ!そうではなく、せっかく遠方まで輸送するのに、薬草の鮮度が落ちて効能がなくなってしまっては、元も子もないのではないでしょうか。」
「······」
「例えば、なんですけど、薬草の栽培方法をお教えするというのはいかがでしょう?」
え···
「ええええ!!」
思わず心の驚きを漏らしてしまった私。栽培方法なんて教えちゃったら、宇汾さんの万能薬が益々売れなくなっちゃうじゃん!!!
瑞凪様も同じように目を見開いている。何だって智彗様はこんなにもお人好しなのだろう。せっかく万能薬が売れて、財政難の打開に一歩漕ぎつけたのに!
不良騎士が「はっ」と鼻で笑うも、魯源さんが「おい!」と彼の組んでいる足を叩き、保護者としての躾をする。
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