2.全てはあなたたちの性格にあります
第6話
ここは幌天安という小さな内陸国。
元々幌天安は自然に満ちた大国だったが、周りの国々に領地や資源を奪われてしまった。
いや、奪われたというよりも、不利な交渉を持ちかけられ、智彗様がまんまとそれにのせられてしまったらしい。
「···私も兄も、戦を望んではいない···。祖父は軍神と謳われるほど戦場で活躍していた人だったが、そのせいで報復を受け父と母を失った···。」
「···つまり、戦を避けるために仕方なく領地や資源を他国に渡してしまったと。それがこの国の財政難に繋がったと。」
「····そうだ。」
今私は、瑞凪様ととある部屋の一室にいる。
本来は"客人をもてなす間"として、花文字で書かれた掛け軸や煌びやかに輝く金色の鶴の彫刻など美術品が沢山飾られていたらしい。でも今はなんとも錆びれた、殺風景な部屋だ。
かろうじてある机と椅子は、金で塗られていたと思われる表面がところどころ剥げている。
財政難を実感するには充分だ。
私は何ともいたたまれない雰囲気の中、瑞凪様に出されたお茶をすすった。
湯呑みも少しかけているのが目につき、別の話題を振った。
「あ、このお茶、深みがあって美味しい!」
「····それは、私が育てた茶葉から抽出したもの。」
「え、ええー!!このお茶、瑞凪様が作ってるの?!」
「ああ····、書物を見て、育て方を学んだ···。」
ええ?!それはあくまで趣味だよね??
まさかお茶も節約するため、自家栽培し始めたとかじゃないよね?!ちょっと!皇帝の弟さんが何やってるの?!
私が感心しながらも顔をひきつらせていると、服装を整えた智彗様が部屋に入ってきた。
「わっ!智彗様っ!その服装とっても可愛い!!」
「ありがとうございます。私が幼少期に着ていた着物を侍女に出してもらいました。」
金色の襟と帯に赤色の着物、そしてフワフワなファーの羽織を羽織っている。
私はこの国の状況を、瑞凪様から聞いたと智彗様に話した。
「祖父の時代には1000人いた従者たちも今では100人にも満たない状態でして···ご覧の通り宮廷の老朽化も著しく、資源の確保もままならないため王都から離れる人々が増えてしまったのです。」
「資源って、例えばどんなものがあったの?」
「主に鉱石が盛んでした。しかし鉱石が採掘できる鉱山を取られてしまいまして···」
「取られたって···、いくら戦がイヤでも、そんな一方的に取られることなんてあるの?」
「代わりに周辺国は、動物の毛皮や繊維、書物を置いていきました。毛皮や繊維はともかく、書物は私と瑞凪にとっては価値あるものですから。」
···あなたたちだけに価値があっても意味ないって。しかも鉱山とじゃ割りに合わないよね?!
「···なんというか、完全に足下みられてる気がするんだけど。」
「鉱石は主に戦に使われる武器となります。私たちには必要がないものですし。」
「戦を避けたい理由はさっき瑞凪様から聞いたわ。でも、もしいきなり攻め込まれたらどうするの??」
「もちろん、そのために各国と和平条約も結びました。」
···なるほどね。
でも周辺国が鉱山を欲しがったのは当然武器を作るためだ。この世界では常に戦をする覚悟でいないと、財政難に陥るってわけね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます