第7話
それならもう残された手段はこれしかない!
「智彗様と瑞凪様が他国の皇族の養子に入るってのはどう??」
「身も蓋もないな···。」
瑞凪様が眼鏡を曇らせながら静かにお茶をすする。
···あ、さすがに早く帰りたいのがばれたかな。
というか養子となると一族を途絶えさせることになるんだよね。。私、国の皇族様に向かってなんてことを言ってるんだろう!
私は心臓をバクバクさせながら、慌てて謝ろうとした。
「あ、あの、ご、ごめんなさ」「ヒック」
智彗様がシャックリをして私の謝罪を遮る。
「し、しつれヒック···少しヒック、一度にたくさんヒックお茶を飲みすぎましてヒック」
私は智彗様に、息を止めながらお茶を4回飲むと治ると教えた。
「あ、凄い!本当に治りました!!ありがとうございます···瀬里!」
お茶の熱さに頬を染め、満面の笑みを向ける智彗様。はあ~キュンとする。
じゃなくて、
「ごめんなさい、養子だなんて軽はずみな発言をしてしまって···。」
「いえ、そもそも皇族は養子には入れませんから。気にしないで下さい。」
そっか···そうだよね、皇帝が養子に入れば、一族途絶えるどころか国がなくなっちゃうだろうしね。
「つまり、財政難を乗り切るには王都を繁栄させればいいってわけよね?そのためには何か目玉になるものを作って流行らせないと!」
「···その目玉となるものが分からないから、あなたを派遣した···。」
私は湯呑みを両手で持ち、お茶に自分の姿を移した。
お茶はきっとどこにでもあるだろうし、さっき言っていた動物の毛皮や繊維も周辺国にあるわけだし···。
というか、さっきいた書庫の蔵書整理はしないのだろうか?そこらじゅうに積まれてたら読みたい時に読めないでしょ!
智彗様と瑞凪様にとって書物は価値あるものだと言ってた癖に、何で本好きの人ほど本を片付けることが頭にないのか···。
「本···書物って、私が見た限りとんでもない量があった気がするんだけど、何冊くらいあるの?」
「さあ、どうでしょう···恐らく500万冊くらいでしょうか?」
「ご、ごひゃくまんっ?!」
500万冊といったら日本の超名門大学と同じくらいの蔵書数だ!
「私と瑞凪は書物好きな母の影響で小さい頃から書物ばかりに読みふけってきました。周辺国の皇族は子供たちに戦や商売のための学を身に付けさせるために必死で、それ以外の書物はあまり必要とされていないようなのです。」
「···だから周辺国はこの国にいらない書物を置いていったわけね。」
「ですがその置いていった書物がなかなか面白いんですよ!空想の物語でも戦術が主たる書物だったり、人間の心理に迫る書物だったり。」
智彗様が目を輝かせて言った。
「···ああ···、あの"心理学"という書物は、実に新鮮味があったな···。」
続いて瑞凪様も···。
それから2人は興奮のあまり、書庫にある書物の内容を交互に語り始めた。あの空想物語に出てくる武器はかっこいいだの、人間の心理を利用すれば商売に活かせるのではないかだの(じゃあ活かせよ)···
話についていけなくなった私は、もう一度書庫を見たいと言って書庫に案内してもらった。
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