prologue
第2話
うち、倉田家にある本の蔵書数は約4000冊。
私は小さい頃から、両親に本を読め読めと言われて育った。本は文章から構成され、文章は一つ一つの文字で組み立てられている。
美しく完成された本を読むことで文字や文章を学ぶことができ、且知識を得ることもできる。
でも私は、両親に「本を読め」と"本推し"されすぎたせいで、活字が嫌いになった。
これはきっと、やるなと言われたことをやりたくなる気持ちの裏返しだ。
4000冊で埋めつくされた部屋で、結局私がやったのは、本の整理整頓だった。
両親は本が好きな癖に、なぜか本を片付けない。縦に積まれっぱなしの状態だ。
好きなら片付けろ。かくいう私も、本が嫌いな癖に片付けているのだけれど。
私は大学図書館で司書をしている23才、派遣社員だ。短大在学中に司書資格を取って、卒業して働いている。
理由は勿論、本の整理が好きだから。
ある日、派遣期間満了が近づく中、上司が私に言った。
「君みたいにフットワーク軽い子はなかなか司書にはいないんだ。良ければ来年度からも派遣の契約をして欲しいんだが····。」
「ありがとうございます!ぜひともお願いします!」
「そうか、助かるよ~。じゃあとりあえず、今日から中国古書の整理もよろしくね!」
「·········」
謀られた。
中国古書は難解だ。日本語ですら怪しい私に、中国古書って····。
私は、先輩にも誉められたのだが、本の整理をテキパキとこなすらしい。
図書館司書の仕事と聞けば、利用者への貸借受付や書架への案内といったものを想像するだろう。あくまでそれは表舞台の仕事。
裏方の司書は検索システムの作成や本の分類、整理が主な仕事で、ひたすら黙々と本の形態を探り、パソコンに情報を打ち込んでいかなければならない。
そんな地味な仕事中、司書にありがちなのが、図書館に入ってきた新刊を読んでしまうということ。司書は大概本好きが多い。
だから私のような"活字嫌いな司書"は、図書館の仕事が捗るのだ。
ただし読めない文字である中国古書に関しては別。
中国古書のある書庫の地下1階に行くと、無造作に並べられた書架を見て、深いタメ息をついた。
きっとずっと避けられてきた書架なのだろう。棚に埃が乗っかっている。
「可哀想に····。今度中国語の教授に翻訳してもらおうっと。」
私に辞書で調べるとかそういう頭はないのだ。
一番端にある古書が一際分厚くて、私はそれを手に取ると、表紙の埃を手で払い、中を開いた。
多いと思っていたページ数は少なく、代わりに本の裏表紙の裏側に木箱のようなものがついている。コンビニでもよく見かける付録付雑誌のようだ。
小さな木箱をスライドしてみると、中には透明な勾玉がついた首飾りが入っていた。
「····さすが中国古書。付録付とは奥が深い。」
私がそう呟いた瞬間、勾玉が真っ白な光を放ち、勾玉が宙に浮かび始めた。
は、はあああ?!!─────
声を上げる間もなく、私は勾玉の光に吸い込まれていったのだった。
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