第37話
「百奈ちゃんって呼んでもいい?」
えー。どうしよっかなあ。乙菱にちょっかいかけてる癖に私にまでちょっかいかけてくるの?たらしなんだね亘くん!
「うん。いいよ?」
「いいけど、百奈は俺のもんだからね?」
後ろからコップの淵をつかむ大きな手。亘君と話している隙に取り上げられて。
そして後ろの彼が、紙コップの中身をゴクゴクと飲んでいく。
「っ、ろ、鹿助君?!」
「うげ。薬局で売ってるやつよりずっと漢方臭いね。」
「ちょっと!!なに勝手に飲んでるの?!」
「だって。百奈がふうふうしたやつだし。」
2人組の彼女らが、開いた口が塞がらない状態で鹿助君を見つめている。いや、驚いているというよりも、鹿助君に神様のような羨望の眼差しを向けている。
私は残念ながら顔面蒼白でござる。
「ね、ねえ!鹿助君、まずいって!」
「うん。不味かった。」
「そうじゃなくって!」
実習助手さんに何事かと問われて、鹿助君は何事もなかったように自分の台へと戻っていく。
「すみません。実は東さんの桂皮が最初からなかったようで、」
亘君が適当に嘘で繕ってくれて、私に『こっちは大丈夫だから。』と手で合図してくれた。
乙菱は両手を合わせて、私に謝る素振りをしている。
自分の台に戻れば、平然と生薬を抽出する鹿助君がいるのに。私の心臓はどうにも落ち着かない。
製薬会社から内定打診されてるなら、さすがに基準量越えて飲めば何かしら副作用が出ることくらい知ってるでしょ?
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