第35話

「やっぱり、うちんらのこと疑ってるの?」


「え?疑ってないって。」


「それならさあ、矛兎さん、この葛根湯飲んでみてよ。」


「はい?」


「東さんの桂皮をうちんらが盗んだとは思ってないんでしょ?だったらこの処方で飲めるはずでしょ?」  


「……う……」


「ね?飲めるでしょ?」 


     

ランプを囲う三脚台からビーカーを取り、ティーバッグから抽出された液体が紙コップに全量注がれる。



まだ熱いそれを、彼女が私に渡してきた。



「ねえ、なんの証拠もないのに、臭いだけで疑われて気分が悪いんだけど。お詫びに飲んでよ。」


「…………」  



このタイミングで鳴るお腹。



お昼食べてないから、得体のしれない漢方でお腹満たせって?いいよ。やってやろうじゃん。



彼女から紙コップを両手で受け取って、ふうふうと息で冷ます。でもお腹空いている時の方が漢方は吸収しやすいから、きっとお腹痛くなる。



震えそうな両手でしっかり紙コップを絶妙な力加減で支えた。



「百奈!そんなの飲まなくたっていいって!」



乙菱が後ろから声を掛けてきて、目の前の彼女がキツい目つきで睨みつける。

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