第34話

「矛兎さん?なんでここに?」

「知らないなあ。てかうちらが知るはずないんだけど。」



まあそうだよねえ。証拠がなきゃ吐くわけないよね。



「そっかぁ。でもぉ、なんか抽出中のソレ、桂皮の香りが強すぎるっていうか。」 

     

「え?もしかして矛兎さん、うちんらのこと疑ってるの?」


「そんなこと一言も言ってないよ?」


「言ってるようなもんじゃない?」   



満面の笑みで首を横に振ってやる。疑ってるけど、疑っていない素振りをしていますって。



でも明らかにニッキの臭いがキツい。その漢方薬大丈夫?生薬一つ一つの基準値を超えると、けっこう危険な薬になっちゃうんだよ?



「ねえ、大丈夫?それ、実習の最後に自分で飲まなきゃいけないんだよ?」


「……知ってますけど?」


「生薬の使用基準値を超えると、頭痛や腹痛や、酷いと脳にまで影響が出る可能性だってあるんだよ?」


「…………」



2人組がだんまりになっちゃって、思わず自分の唇からふふっと笑いが漏れる。



脳の影響はちょっと言いすぎだった?桂皮の量が多いくらいじゃ、せいぜい腹痛程度のもんでしょう。



でも2人組のうち、1人が台に手をつき、不敵の笑みを私に向けてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る