第31話

午後一の授業は漢方と生薬の実習。



実習は体力も精神力も削られるため、本当はご飯を食べておくべきなのに。意地になって食べなかったせいか、お腹が鳴りっぱなしだ。



「あんなにお昼ご飯与えたのに。まだ足りなかった?」



なぜか隣には鹿助君がいた。



漢方の臭いが鼻をつく実験室で、私から鳴るお腹の音に反応したらしい。白衣は音まで隠してくれないらしい。



「う、うるさいよ。」     

「なんか動揺してる?」



悔しいけどちょっとだけ動揺した。でもほんの一瞬ね。



スーツのジャケットを脱いで、その上に白衣を羽織る姿に見惚れない学生はいないって。それを鹿助君がやるんだもん。



でも私の白衣姿に見惚れない男の子もいないから。今日はフリルのラップスカートを履いているから、白衣の裾から見える脚に程よい色気を感じてしょうがないよね。



それに腕まくりをした華奢な腕を見せれば、白衣萌えの完成。



ほら、ね?どう鹿助君。私に白衣萌えを感じるでしょ?



葛根湯かっこんとうって風邪に効く漢方薬だよね。俺が風引いたら百奈が看病してね。」



私の白衣姿、褒めようともしない。



むしろ鹿助君の腕まくりをした白衣の袖から覗く、固そうで綺麗な手首とか。手の甲に浮かぶ骨が大きく隆起しているのに、指先が綺麗でつい目がいく。



「髪、結ばないの?」


「い、今から結ぶんだってば。」



ミディアムヘアの髪を束ねようと、ゴムを口にし手を後ろにやる。でも鹿助君が、私の髪を束ね始めた。

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