第21話

『出た、矛兎百奈の女子禁制あざとスマイル。』

『東も矛兎もどっちもウザい。』



赤信号、二人で渡れば怖くない。亘君、二人の可愛い子にピースされて逆ハー気分を味わえてよかったね。



季語のない俳句が読めたところで、隣の盾狼君に怪訝そうな顔つきで見られた。



え?なに?あんたにもピースしとけって?



笑顔で密かに中指を立ててやれば。笑顔で親指を下に向けて返された。





授業が終わって、雪崩に流れて大教室から出ていく私と乙菱。



「あたし、ちょっとお昼買ってくるわ。」


「じゃあ次の教室で席とっとくし。」


「よろしくさんきゅう。」



次はゼミで、学部棟の3階にある小さな教室で授業が行われる。



階段面倒だから、エレベーター待ちをしようと、1階つきあたりの方へと歩いていく。



通りすがりの男の子二人組に「百奈ちゃん!」と手を振られて、サービスで返しておけば。振り返した手を見知った手につかまれた。



「百奈ー。次の授業なに?ゼミ?」


  

鹿助君だ。



つかまれた手を振りほどこうとするも、なぜかそのまま繋がれてしまう。貝がら繋ぎで。



「うん、ゼミゼミ。鹿助君は?痴漢猥褻論?」


「いんや、次は百奈強制連行学。」



周りの学生たちからは、不解な目と困惑の表情を向けられている。こんなに可愛い私と、目立ってしょうがない鹿助君が皆の前で手を繋いでいるのだから。



でも握力がちいとばかり強いんでないか?



『ねえ、ちょっと。手、離してよ。』

「付き合ってんだから別にいいじゃん」



よくねーわ。おっと、口悪い本音。

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