第22話

『こんな人だかりで恥ずかしくないの?』

『人だかりで見せておいた方が信憑性が出る。』



エレベーターに突き当たる一歩手前の壁際で、鹿助君が私の身体を押しやる。



スーツ姿で、オールバックにしたグレージュの髪がさらりと前に垂れ下がり。微妙に乱れた髪を、鹿助君がごつごつとした指先で掻き上げた。



鹿助君の行動一つ一つに、色気なんて感じないんだからね?



「ちょっとなに鹿助君!私、席取りで忙しいんですけど、」


「さっき、于羽ゆわに色目使った?」


「は……、誰?」


「于ー羽。亘、于羽。」


「ああー、亘君ね。」      

      


乙菱と一緒にピースした黒髪の子ね。どんな顔だっけ?



「色目?色目なら使ったよ?」

「なんで?」

「なんでって。かっこいいから?」   

「俺は?」

「へ?」

「俺だっていい男じゃない?」



鹿助君、自惚れすぎなんだよ。私みたいじゃん!ああ反面教師ってこういうことをいうのかあ。 



「はいはい、鹿助君、かっこいー」


「じゃあキスして?」


「……???」


「わお宇宙人みたいなお顔。」 


   

そら宇宙人にもなるよ。うざいんだよ盾狼鹿助。

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