第19話

男の娘である親友のあずま乙菱おとびしは、私と同じ159センチ。いつもナチュラルに巻かれたベージュ色のロングヘアが、透明感のある乙菱によく映えている。



乙菱が男だってことは、多分、私しか知らないと思う。



「ねえ、今日の私ってそんなに肌くすんで見える?」

   

「肌も心もくすみ系。」


「やだもう切腹する。」


「下地、ミックスして使えば?」


「Ohなるほど!乙菱、好きー。」


「乙菱も乙菱を自画自賛!」 


 

病態学の授業で、リングノートに何も書いていない乙菱。どうしたの?いつものことだけどさ。



じっと、斜め49度の方角を見つめている。乙菱の細い上向きまつ毛が、綺麗に上下している。気になって調査してみることにした。



「……もしかして、スーツの男を見てる?」


「…先生?」 


「ちがうちがう。ほら、『今日の俺かっこいんで見てください』っていってるオールバックの、」


「……その、左隣の黒髪君を見てる。」  



乙菱は、どうやら盾狼君の隣に座っている、黒髪の男の子に目が奪われているらしい。

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